10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

『映画オールタイムベストテン:2017』に参加しました

ワッシュ(@washburn1975)さんという方がされている”男の魂に火をつけろ!”というブログで映画ベストテンをされていたので、私も参加することにしました。

 

d.hatena.ne.jp

 

オールタイムベスト、ということで考えると、結局10代の多感な時期に観た映画で忘れられないもの、ってやつが多くなった気がします。順位は今の気分でたまたまこうなった、くらいのテンションです。ではベストテンの発表です!!ジャジャ~ン!

 

 

 

1.ディア・ハンター 

(1978年 マイケル・チミノ監督)

 

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2.未来世紀ブラジル 

(1985年 テリー・ギリアム監督)

 

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3.タクシー・ドライバー 

(1976年 マーティン・スコセッシ監督)

 

タクシードライバー (字幕版)

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上記の3作品はロバート・デ・ニーロ祭りになってしまいました(”未来世紀ブラジル”ではほんのチョイ役だけど)。

 

今では、なんでこんな映画に出てるんだろ?と首をかしげることも多い(笑)デ・ニーロ様だけど、7~80年代のアメリカ映画界では向かうところ敵なし、名実ともにトップ俳優でしたからねぇ。

 

”ディア・ハンター”や”タクシードライバー”で魅せる孤独と狂気と無骨で繊細な男の哀愁が入り混じった雰囲気は、この人以外では醸し出せないでしょうね。

 

”未来世紀…”は、モンティパイソン流ブラック成分高め、めくるめくイマジネイションの奔流にショックを受けたもんです。

 

 

 

4.ストップ・メイキング・センス 

(1984年 ジョナサン・デミ監督)

 

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私の音楽好きの原点は間違いなく、ロックバンド、トーキング・ヘッズのライブドキュメンタリー映画である本作であります。『普通のルックスのメンバーがやたらと踊れる音楽を演奏している&アートセンスが鋭い』そんなバンドがいまだに好きですから。

 

 

 

5.オール・オブ・ミー 

(1984年 カール・ライナー監督)

 

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アメリカのコメディー映画が好きになったのも、元々はスティーブ・マーティンが大好きだったから。特にこの作品は小粋で切なくて、でもなにより腹抱えて笑えて未だに大好き。

 

2000年代に入ってからは”ピンクパンサー”のリメイクに出演したこと以外ではここ日本ではあまり話題に上らなくなってて、ちょっと寂しい気もしますが、本人は今ではなぜかバンジョー奏者としての活躍の方に軸足を置いてるようですね。

 

Rare Bird Alert

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 6.シェフ 三ツ星フードトラック始めました 

(2014年 ジョン・ファブロー監督)

 

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この映画もとにかく元気が出てスカッと笑えて、ポジティブな反骨精神にあふれていて、アメリカ映画の最良の部分が詰め込まれているな、と観るたび思いますね。あとでてくる料理がことごとく美味しそうなのも〇。

 

 

 

7.愛情萬歳 

(1994年 ツァイ・ミンリャン監督)

 

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ここからは所謂アートシアター系といいますか、万人には受けないであろう”クセの強い”タイプの映画です。

 

台湾の映画監督、ツァイ・ミンリャンの作品に登場する、孤独にたたずむ無口な人たちにどこかシンパシーを覚えます。この映画以降はよりシュールで理解を拒絶するような厳しい雰囲気の作風に移行していくので、彼の映画を観たことない人なら手始めにこの作品がお勧めですね。

 

 

 

8.野火 

(2014年 塚本晋也監督)

 

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ここ最近観た日本映画の中でダントツに衝撃を受けた映画でした。

 

”都市に生きる者たちの野生”というテーマで長らく映画を作ってきた塚本監督が太平洋戦争を取り上げた、ということでとても興味深かったんですが、その戦地のただ中に放り込まれたかのような臨場感は、他のどの戦争映画とも違う異様なリアリティーを醸し出しています。

 

明らかに低予算で作られてるんだけど、それを有り余る作り手の情熱で乗り越えている。映画作りの教科書として製作を志す者は必須科目にすべき映画だと思う、いやマジで。

 

 

 

 

9.アメリカの友人 

(1977年 ヴィム・ヴェンダース監督)

 

アメリカの友人 デジタルニューマスター版 [DVD]

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ヴェンダースの映画は他に好きなものがいろいろあるんですが、男と男の友情もの”バディー・ムーヴィー”な好きな私としては、やはりこの映画は外せません。

 

初期のヴェンダース映画の常連撮影監督、ロビー・ミューラーの色彩感覚が素晴らしい画面も美しい。

 

原作は”太陽がいっぱい”でも有名なパトリシア・ハイスミス。レズビアンだった彼女が別名義で書いた小説”キャロル”も近年映画化されて話題になりました。

 

 

キャロル [DVD]

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10.ラブ・ストリームス 

(1983年 ジョン・カサベテス監督)

 

ラヴ・ストリームス [DVD]

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”アメリカン・インディーズ・ムービーの父”、ジョン・カサベテス。最初に観た彼の映画がこれ、でした。

 

20代の前半に観たので、この映画の本質をどれだけ理解できたかわかりません。愛に飢えた大人のドラマ、でした。中年になった今観直したらまた違った印象になるかも、なんて思います。

 

 

格差社会を生きる人たちを見つめる映画 11選 (随時更新予定)

 アベノミクスによる戦後3位の好景気、といわれても庶民の我々には一切実感を感じない今日この頃いかがお過ごしでしょうか?(…と、きっこさんみたいな入りですが笑)。

 

www.nikkei.com

 

 なんでも企業の内部留保は400兆円超えてるそうで。そりゃそんなにため込んで働く人への賃金に回ってないのなら、景気回復なんて実感できるわけないわな…とため息吐息、なのです。

 

www.jiji.com

 

 そんな現代日本の現状にリンクするような映画、つうのを探してみるといろいろありまして。映画を観ること自体にはなんの効能もないのですが、厳しさを増す格差社会に生きる心構えを映画から感じる、というのも楽しみ方の一つではないか、などと思いまとめてみました。

 

 

〇どですかでん

 

どですかでん[東宝DVD名作セレクション]

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 宮藤官九郎がこの映画が大好きで、自身が監督する際は必ず観直してる、ということをインタビューで話しているのを知り、興味が出てつい最近観てみました。

 

 パワー漲る大作・傑作揃いの黒澤明映画の中では、目立たない位置にいる小品だな、と常々思ってたんですが、いやいや不思議な余韻に浸れる素晴らしい作品でしたね。

 

 終戦直後のバラック小屋が立ち並ぶとある街に住むいろんな住民の生き様をスケッチ風に切り取っている。一種の群像劇だもんでこの人が主役だ、的な人物がいないし、ストーリー的にもメリハリのある起承転結がない点が評価が分かれている由縁かも。

 

 伴淳三郎、田中邦衛、井川比佐志、松村達雄、三波伸介…昭和を代表する名優たちがわんさか登場するだけでも見応えがあるんだけど、どこか絵画的・非現実的なセットの中で、底辺で生きる人々の悲哀と可笑しみ、そしてときに卑小で自分本位な内実をリアリズムとファンタジーの狭間で描いてる独特なタッチが面白く、またそれを見つめる黒澤監督の視線には優しみとヒューマニティーを感じました。

 

武満徹:どですかでん

武満徹:どですかでん

  • アーティスト: 鈴木大介,武満徹,渡辺香津美,岩佐和弘
  • 出版社/メーカー: フォンテック
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武満徹作曲のアコースティックギターで奏でられるテーマ曲も素晴らしかった。

 

 

〇わたしは、ダニエル・ブレイク

 

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

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 こういった題材の映画をピックアップするなら間違いなく外すことはできないイギリスの映画監督といえばケン・ローチでしょう。1967年の監督デビュー以来、一貫してイギリスの労働者階級の人々を主役に据えた映画を撮り続けている人の最新作で、もしかしたらこれが劇場映画の引退作になるかもしれないのがこの作品。

 

 質実剛健に生きてきた初老の大工・ダニエルは、求職するため職業安定所にいくが、パソコンが全く不得手にも関わらずオンラインでの登録を強要される。そのとき同じく安定所員から理不尽な対応を強いられているシングルマザーのケイティーと知り合い、交流を深めていく…

 

 監督自らが現代イギリスの格差社会の実情を調査した中で知り得た実話を元に作っているのでショッキングなシーンも多い。しかしそれでも思わず笑ってしまうユーモアがそこここに散りばめられていて、未だ強固な階級社会に生きるイギリス人の逞しさとしたたかさも思わず感じてしまうのです。

 

 

〇未来を花束にして

 

未来を花束にして [DVD]

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収入格差、もですが男女間の格差も一昔前は存在してた訳で。

(※いやいや今この瞬間だって男女間の歴然とした格差が存在してる国もいくらでもあるんですよね)

 

1910年代のイギリスで女性参政権を手にするために行われた社会運動”サフラジェット”を題材にした映画。平和的に話し合いで改善しようと試みるも無残に無視されてきた当時の女性たち。自分たちの存在と主張を世間に知らしめるために、半ば追いつめられるように過激な行動に身を挺するキャリー・マリガン演ずる主人公自体は創作なんだけど、こうした境遇に置かれた女性たちが文字通り命を懸けて闘ったことで現在のような男女平等な社会が築かれたのですよね。観てて背筋が自然に正したくなるような厳しくも美しい映画。

 

 

サフラジェット : 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト

サフラジェット : 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト

 

 

 

〇恋人たち

 

恋人たち [DVD]

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 リリーフランキー主演、 2008年公開された”ぐるりのこと”から(本人曰く)悪いことが重なり、一時は映画監督辞めよう、とまで追い詰めた橋口亮輔が7年越しに放った起死回生の一作。

 

  妻を通り魔事件で亡くし、自暴自棄から抜け出せない男…皇室の雅子様マニアの郊外に住む孤独な主婦が、ある日訳ありな男と出会い…パートナーと上手くいってないゲイのエリート弁護士…最後まで交わることのないこの3人が主軸となりストーリーが展開します。

 

  監督自身が味わった、つまづいた者及びマイノリティに冷淡な社会の様相がモザイクのように散りばめられていて、観てて決して心地よくはありません。しかしこの現代を多層的に丸ごと切り取ってやろうとする野心的な試みは、漫画やヒット小説原作の映画化ばかりが跋扈する、ここ日本映画界では実に貴重だと思うのです。

 

 

〇真夜中のカーボーイ

 

真夜中のカーボーイ (2枚組特別編) [DVD]

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 アメリカン・ニュー・シネマの不朽の名作。そして”持たざる者たち”が都会で必死にのし上がろうとする…そして(得てして)敗北する物語、でもありました。

 

 ジョーを演じた、ジョン・ボイド(アンジェリーナ・ジョリーのお父さん)ももちろんよかったんですが、なんといってもホームレス役を演じたダスティン・ホフマンの画面から臭い立ってきそうな堂に入った汚れっぷりが強烈な印象として残ってますね。

 

 ※爆笑問題のラジオ”爆笑問題カーボーイ”はこの映画からとられたそうな。

 

 

〇幸せのちから

 

幸せのちから コレクターズ・エディション [DVD]

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  観るまでは、ホームレスから株売買の世界で億万長者になった男の実話をアメリカで最も成功した黒人俳優の一人、ウィル・スミスが演じると聞いて正直あまりピンときてなかったんですが、どうして実の息子との共演も相まって真に迫る熱演に感動してしまいましたね。

 

  80年代レーガン政権下の不況に喘ぐアメリカで、主人公は妻に逃げられ、再三ツキにも見放され惨めな撤退戦を強いられ、観ている方は「彼はいつ逆転するんだろう?」って映画終盤までヤキモキ。エンディングでさらっと貧困生活から脱出する足がかりとなる、証券会社に入社が決まったことが観客に告げられます。

 

  アマゾンのレビューに「人の迷惑顧みない主人公が不快」みたいなこと書いてる人もいたけど、それが自己責任であろうが、どん底の貧困状態に陥ったらそりゃ自分のことしか考えられなくなりますって。だから社会全体でケアしていかなければならないのですよ。最低限の人間性を失わせないために。

 

 

〇ひとりぼっちの青春

 

ひとりぼっちの青春 [DVD]

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  20年近く前に観たこの映画、『大恐慌時代のアメリカで行われていた"ダンス・マラソン”に出場する、見ず知らずの男女の物語』というあらすじ以外はほとんど覚えてないにもかかわらず、未だに見終った後のどうしようもないやるせなさが心に残っているのです。

 

 とにかく最後まで踊り続けていたカップルが優勝、という至極単純なルールであるダンスマラソンに失業中の二人はヘロヘロになりながらも必死な思いで食らいつきます。その姿は当時ベトナム戦争へと突き進むアメリカの暗い世相を反映したかの如く、悲壮感あふれる殺気迫るものでした。監督はシドニー・ポラック、そして主演女優は後に急進的な反戦運動に身を投じた、ジェーン・フォンダ

 

 

〇サタデー・ナイト・フィーバー

 

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 ”格差社会”をテーマにした映画って他になんかあったかなぁ…とネットで探してみたら、この不朽の名作が紹介されていました。そういや主役であるジョン・トラボルタで有名なあのディスコでのダンスシーンは観たことない人にも強烈に印象づけられているけど…そもそも一体どんな映画だっけ?って人、結構多いんじゃないでしょうか。

 

 上流階級の人々が暮らすマンハッタンと所謂下町であるブルックリン、といった感じで完全に住み分けがなされていた、70年代ニューヨーク。ペンキ屋でバイトする、人はいいがうだつの上がらない青年・トニーは、週末のディスコではスター的存在。

 

 そんなトニーが一目惚れするステファニーは、ブルックリン育ちながらマンハッタンで仕事をするキャリア・ウーマン。彼女をデートに誘うが、「あなたと私は住んでる世界が違うのよ」と散々な言われよう。ここで並の男ならさっさと引き下がるもんでしょうが、お馬鹿と純粋さを併せ持つトニーは、賞金付きダンスコンテストのパートナーに(半ば無理矢理)ステファニーを担ぎ出す。

 

 なんといっても野性味と人の良さを体現するジョン・トラボルタの存在感とカリスマ性に惚れ惚れしてしまうのですが、地元のダチと何の疑問も持たず、明日の見えない底辺の生活を謳歌していた青年が少しずつ目覚めていく成長物語としても実に見応えがありましたね。

 

 

〇不安は魂を食いつくす

 

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 70年代の西ドイツ、掃除夫として働く独り暮らしの老婆とモロッコから出稼ぎに来た若い黒人男性のメロドラマ。監督は、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

 

 中盤までは周囲の差別的で好奇な目にさらされながらも愛を育む、底辺で生きる二人…といった感じで物語が進むのですが、周りの人々の態度が軟化し始めるにつれ今度は肝心な二人の関係に陰が差してくる、という皮肉な展開となります。

 

 社会から疎外された人たちの寒々しい光景が画面越しに立ち上ってくるような映画でしたね。

 

〇息もできない

 

息もできない [DVD]

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 そもそも傑作揃いの韓国映画の中でも超弩級の傑作、そして観た後に感じる”やるせない”という言葉がこれほどあてはまる映画もないのではなかろうか?

 

 主役である粗野なチンピラ・サンフンと女子高生・ヨニ。ひょんなことから出会った二人が少しずつ心を通わせていく。貧困家庭に育った二人が徘徊する韓国の下町の風景、家の雰囲気の隅々に殺伐とした物悲しさが満ちている。

 

  『あっ、そうだったのか!』と意外な展開が待っているストーリー運びを含め、所謂自主製作ものにありがちな勢いまかせじゃない緻密さもある。サンフンを演じ、製作・脚本・監督までも務めたヤン・イクチュンの暗く激しい情念がこの映画には文字通り息もできないほど詰まっているのです。

 

 


菅田将暉がボクサー役に挑む!『あゝ、荒野』特報

 

↑近日公開、ヤン・イクチュン出演の日本映画。楽しみ。

 

〇スノーピアサー

 

スノーピアサー(字幕版)

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  現在は有料ネット配信サービスであるNetflixのみでの公開となっている新作”オクジャ”が話題になっている韓国の新鋭、ポン・ジュノ監督の初ハリウッド進出作品。

 

 氷と雪に覆われた近未来の地球。わずかに残った人類は永久機関で動く列車の中で暮らしていて、前方車両に富裕層が、そして後方には奴隷階級である貧困層がひしめき合うように生活している。貧困階級であるカーティスとその仲間は、自由を求めて先頭車両まで決死の突破作戦を決行するが、待っていたのは意外な結末だった…

 

 まさにグローバル社会の縮図、上VS下、政治的メタファーありまくりなストーリー、のようですが、いい意味で大味というか漫画チックというか、まぁ突っ込みどころも満載で、あんまり眉間にしわ寄せて真剣に観る類いの作品ではないのでご安心を(笑)。

 

 

 

 

99%対1% アメリカ格差ウォーズ (講談社文庫)

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”よそ者”同志の夫婦です

26歳で地元に帰ってきてから、かれこれ20年ほどになった。それまでは高校卒業後すぐ上京し3年、そしてその後福岡に4年ほど暮らしていた。

 

妻とは地元に帰った直後くらいの頃出会った。彼女は県外出身で大学のときこちらに移ってきてそのまま居着いている。

 

知り合い期間が4年くらいと長く、なんの因果か結婚に至ったのだが、今になるとやはり似た者夫婦だったんだなぁ…と思う事が多くなってきた。

 

特に思うのは、お互いこの地元に対して『よそ者意識』が強くある、ということ。

 

 

 

そもそも私が高校卒業後そそくさと地元を離れたのも、拭いがたい『よそ者意識』からくる疎外感がたまらなく嫌だったのだ。

 

高校のときは友だちもなく、図書館とレンタルヴィデオショップの往復で暇を潰していた。孤独だった。

 

この街を出ればなにか新しい未来が開けているでは?こんな自分でも何者かになることができ、自分を認めてくれる人たちと知り合うことができるのでは?そして、自分の能力を存分に発揮する場所を見つけられるのでは?

 などといった、今思うと若気の至り・青臭さ満点の心持で地元を飛び出した。

 

…しかし、そんな夢を実現する場だったはずの都会での生活も慣れてくると「いつまでもこのままパッとしないまま時だけが過ぎていくのか…」という焦燥感に襲われるようになった。

 

ちょうどその頃、父親の体調が悪くなってきたと聞き、気ままではあるが焦点の合わない暮らしを畳むいい機会なのかも、と思いたち一人暮らしを辞めたのだった。

 

 

Uターン

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…妻は妻で大学卒業後、専門外であるカメラマン事務所で働きだしたものの自身の理想とかけ離れていたようで、私と知り合った頃はバイトしながらライブハウスに足しげく通い、バンドマンの写真を撮ることに没頭していた。

 

あの頃はバンド・イベントの企画運営も精力的にやっていたのだが、私と結婚していつしか自身が唄を作る側、ミュージシャンを目指すようになった。彼女が三十路になりたての頃だ。

 

一般的にはその年代なら夢や希望とやらには一定の折り合いをつける時期なのだろうが、妻は違った。自作曲を宅録し、知り合いの画家にジャケットの絵を描いてもらい、CDを500枚プレス(これだけでも結構な額がかかってる)、方々のレコード店や個人営業の店にCDを委託販売してもらう交渉、各ライブハウス・カフェ等ライブが出来そうな場所の開拓や自身が出演するイベントを企画、更にはPV撮影まで手掛けた。その姿は傍から見てて空恐ろしいくらいの執着ぶりで、そのテンションは多少の波はあれど、10年近く続いていたのだった。

 

 

ウチレコ 宅録初心者のためのお家レコーディング・ガイド

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…しかしそんな彼女もここ最近は『もう音楽活動辞めようかなぁ…』と弱気なのだ。なんでも20代の頃知り合い、いまだに活動を続けている音楽仲間が自分にライブの出演依頼を一切してこない…どころか自分のライブなどをツイッターやフェイスブックでいくら宣伝しても完全にスルーされ観にも来てくれない。どうしてこう無視されるのか…今までやってたことが何の意味もなかったのではないか?こんなに頑張ってきたのに…とひどく落ち込み気味なのである。

 

『人の評価に一喜一憂してても仕方ないじゃないか』『地元の小さな人間関係のことなど気にするな』などと慰めてみたり、はたまた『いつまでそんな夢にしがみついているんだ!』と苛立ち紛れに叱責したりもするが、私自身もバンドをやったり自作曲をネットに上げたりしてて、反響のなさに落ち込んだりした所謂”アーティストくずれ”なので、認められない・承認欲求が満たされないという彼女の寂しさは実は痛いほどよく分かるのだ。

 

「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)

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たまに来るメールは大体ライブのお誘いだ。私に出てくれ、の方じゃないんかよ!!って何回も何回も思ってた。そしていつからか諦めた。私がやってることがそこまで面白くも興味深いことでもなんだろうなぁ…って。だから誰からも誘われないんだって。 結局はいつだって”よそ者”だ、居場所も居心地のいい場所なんてのもどこにもなく、代替可能な存在…それは図書館とレンタルヴィデオショップの往復してた十代の頃見てた風景となんら変わらないのだった。

 

お前と私は同じ景色を見てるんだな…

 

ときに同族嫌悪でお互い罵倒しながらも(笑)、狭い家でくっついて暮らしてる。いい歳した中年夫婦が今の状態じゃ決して実現しないことは薄々分かっていながら、それでもいつもここじゃないどこかに飛び出すことを夢想している。いつまでこんな気持ちを抱え続けなければならないのだろう?こんな気持ちから解放される時が来るのだろうか?…そんな地元に根付いていない”よそ者”同志の夫婦、なのです。

 

ウェルベック”服従”から読む『個人主義のその先』

フランスの詩人であり小説家、ミシェル・ウェルベックをはじめて読んだのは、日本では2007年に刊行された『ある島の可能性』であった。

 

ある島の可能性

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ノイズ・ミュージシャンであり、小説家・画家でもある中原昌也が推薦していたことで知った作家だった。中原氏自体が相当くせ者の表現者なので、このウェルベックも推してはかるべし、とは思っていたのだが、その圧倒的な知識とイマジネイション、そして突き抜けたニヒリズム的思考に完全に魅了されて、日本で発売される彼の著作はほぼ全て読むに至っている。

 


西島秀俊×中原昌也(Hair Stylistics)

(↑今をときめく人気俳優・西島秀俊が中原昌也のノイズについて語ってる映像。この人、根はかなりアンダーグラウンド寄りなんだよね。ウェルベックも知ってるかも)

 

『ある島の可能性』は、現代を生きる辛口コメディアン・ダニエルとその数世紀先の未来のクローン人間の人生が交互に語られる。

 

ダニエルはコメディアンとして成功はするものの、妻との別れ、そして魅力ある年下の彼女に最終的に振られ手痛い失恋をすることになる。性に翻弄され自らの身体の衰えを感じ、なにより出口なしの孤独感に打ちひしがれるダニエルは、とある新興宗教団体に接近する。そこでは”ネオ・ヒューマン”と呼ばれるクローン人間の研究が行われていて、彼はその研究に己の体を差し出すことになる。

 

そして2000年(!)の時を経て世界は崩壊し、他者との接触が一切必要ではない、光合成で生きることのできるネオ・ヒューマンがまるで解脱したような孤立した生活を過ごしている。ダニエルのクローンである、ダニエル24はダニエルが残した自叙伝を読むことが日課となっている。愛も憎しみももちろん性も存在しない漂白した世界に生きるダニエル24は、人間的苦悩の塊であるダニエルの吐露にしだいに影響を受け、ある重大な決心をする…

 

 

10代の頃「人が人を愛する、または家族を、神を、国家を愛する…そのことにより生れる”執着”、それがひいては全ての諍い事の原因ではないか?」などと考えたことがある。愛するという感情があるからこそ、人はその対象を守り敵から退け、あるいは束縛・強制するべく限りない争いを起こすのだ、愛さえなければ人は幸せになれる!ラブ・ウィル・ティア・アス・アパート・アゲイン…とまぁ恋愛経験なしの中坊丸出しの発想なのだが、この”ある島の…”に限らずウェルベックの諸作は、こうした発想と地続きなんじゃ?と読むたびに思う。孤独をこじらせた故の、疎外され愛に見捨てられた現代ヨーロッパのインテリ中年。

 


Joy Division - Love will tear us apart - Official Video with Ian Curtis.

 

さて本国フランスでは2015年に刊行され、その発売日にあのシャブリー・エブド襲撃事件があったことでセンセーションな話題を呼んだ小説「服従」を遅ればせながら読んだ。

 

 

服従

服従

 

 

 

なにせ内容が”2022年、フランスにムスリム政権が誕生する”と言う物騒きわまりないもの、であったため、そのタイムリーさ(”大統領選の最中に銃撃戦が起こる”なんて描写すらある)には身ぶるいがおきるほどだった。

 

フランスの小説家・ユイスマンスの研究者で、大学講師であるフランソワ。順風満帆にキャリアを築き、新入学生と束の間の情事を楽しむ彼だったが、ムスリム政権誕生後、イスラム教徒以外の者は教壇に立てなくなったため大学を追われることに。ユイスマンスゆかりの土地を巡ったり、すでに改教を済ませた者たちとの邂逅を経て、イスラム教に入信し、再び大学へ戻る決心をするのであった…

 

ウェルベックの小説を読む楽しみの一つに、折々のテーマに即した記述に知的好奇心がかき立てられる、というのがあって、今回は、もしかしたら将来的にイスラム政権が誕生するかもしれないフランス及びヨーロッパの政治状況や、19世紀デカダン文化を代表する作家、ユイスマンスのことに多くのページがさかれている。

 

 

さかしま (河出文庫)

さかしま (河出文庫)

 

 

 

とはいえ読破してみると、やはりウェルベックらしい思想が全開であった。無教養である私がざっくり解釈すれば

「人間的苦悩から解放されるためには、思い切って巨大な何か(この場合はイスラム教)に”服従”しちまえばいいじゃん!」と。

 

それはある意味身もふたもない結論なのだが、個人主義が浸透し飽和点を迎えたヨーロッパに蔓延する一種の倦怠感、個々がバラバラになった故の寄る辺なさと孤独感を解決する劇薬は実は、時代錯誤とも思える家長制度・男性上位、そして神への絶対的な信仰を主とするイスラムの教えにあるのでは?という、極端ではあるがどこか説得力もあるウェルベックの皮肉交じりの問題定義、なのであった。

 

さらには、一夫多妻制が承認されている(地位と経済的余裕のある者に限られるんだろうが)イスラム社会。フランソワの上司である大学長が元々の妻の他に15.6歳の女性を娶っている描写を、そこそこの健康さとそこそこの社会的地位を持つ中年男性なら羨まずにはおれないだろう…おっと女性諸氏から非難轟々かも、ですな(苦笑)

 

物語は大学は追放されたものの、アラブ諸国からの潤沢な援助により生活に不自由しない年金を受け取ることになったフランソワが、結局わざわざ再び大学に戻るためイスラムへの改教を受け入れるところで終わる。決定的な思想の転換にも関わらず案外淡々としているフランソワの態度が、どこかそうした状況を待ちわびていたかのようで逆に印象に残った。

 

…しかしそういや、ここ日本でも個人の自由よりもなにか”大きい物語?存在?”への回帰的な動きが、社会の空気の中に見受けられることも増えてきて、読んでいて決して他人事ではないな、と感じたのだ(この時代に教育勅語がどうたら、なんて笑うに笑えないじゃないか)。

 

”絶対的な服従により、人間的な苦悩から解放されより幸福になれる”…行き詰まった現代に生きる者の心の奥底に潜む密かな願望を白日の下にさらすウェルベックはやはり本質的に”危険”な作家だな、と改めて思ったのだった。

 

 

映画『沈黙~サイレンス~』をやっと観れた!

今から10年ほど前、遠藤周作の『沈黙』を読もうとしたことがあった。その頃アメリカの映画監督、マーティン・スコセッシが映画化を目指しているというニュースを知ったのがそもそものきっかけだった。

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 

 

彼の代表作である『タクシードライバー』に衝撃を受けた高校の頃から、ずっとファンだった私としては、元々映画監督になるまでは牧師を志していた、というキリスト教のバックボーンが色濃い彼が日本人作家の原作で日本を舞台にした切支丹弾圧のお話を真っ向から撮る、ということに興奮を覚えていた。

 

 

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そんなことからまずは原作読まなきゃ、と本を手に取ってはみたのだが…実を言うと途中で読むのを止めてしまい今に至っている。

 

その理由は後から述べるとして、実に構想から28年の月日を費やしとうとう完成したスコセッシ版『沈黙』をつい昨日観てきた。

 

 


『沈黙‐サイレンス‐』日本オリジナル予告

 

 

製作までにひじょうに長い年月がかかったことを、さかんに宣伝文句として使われてる印象なのだが、ことこの映画に関してそれが誇張ではないことは、この10年近く断片的に伝えられた数々の報道から間違いない事実だと思う。

 

そもそもほぼ日本人キャストで、宗教をテーマにした歴史劇をハリウッドで製作すること自体容易ではないはずだし、実際なかなか製作が進まないことに関してスコセッシは製作会社から訴えられてたり、またようやく撮影がはじまってもスタッフが事故で死亡したり、なんていう最悪の事態も起こっている。そうした情報を知った上で鑑賞したので、今はほんとにスコセッシ、この映画を撮り上げてくれてありがとう!と言いたいくらい、ほんとにそれくらい見応えのある作品に仕上がっていたのが嬉しかった。

 

matome.naver.jp

 

 

禁教令が敷かれ、し烈な宗教弾圧が行われていた江戸時代の長崎に上陸した二人のポルトガル宣教師が経験する悲劇。人間にとって信仰とは何か?を観る者に問う内容は、とかく宗教意識が希薄な現代の日本人にとっては一番苦手なテーマなのかもしれない。

 

かくいう私自身、かつて原作にチャレンジしたものの挫折したのは、自分の生死を賭けてまで信仰に殉じる彼らの姿にやはり心からのシンパシーを感じなかったからだ。

 

「踏み絵くらいとりあえず踏んどきゃいいんじゃない?」

 「キリストじゃなくても御釈迦様でもいいんじゃない?同じ神様なんだろうし…」

 

しかしこの歳になって思う。産まれたときからずっと栄養失調状態、貧弱な土地で過酷な年貢の取り立てに苦しみ、自由も明るい未来の展望も200%ありえないあの時代の貧しい人たちにとって、現世で徳を積めば天国に行けると説く、海の向こうの遠い国からきたキリストの福音がどれだけ救いになっただろうか、と。自分を現世の地獄から救ってくれる神様を踏みつけにしなければならない痛みはいかほどばかりであったか、と。それを少しは自分なりに想像できるくらいは大人になったよ。だってまぁサラリーマン稼業も片足は牢獄に突っ込んでるようなもんだからね(苦笑)…

 

ただこの映画で興味深かったのは、そんな底辺で生きる切支丹たちの心情に寄り添いつつも、幕府側がなぜここまで過酷な弾圧を行うかもひじょうに理性的に語らせているとこだった。イッセー尾形扮する妙に愛嬌のある井上筑後守や浅野忠信扮する通辞が、アンドリュー・ガーフィールド扮する宣教師・ロドリゴに”(君たちの宗教は)この国の現在の秩序を保つためには不適当だ。だから君が心の中で何を信じようが勝手だが、この国で広めるのはやめてくれ”とときになだめすかし、ときに恫喝するシーンを見ると、確かに封建社会を維持するためにキリストを唯一神とする考え方は危険ですらあったろう、彼らの言い分も一理ある…と思わんでもない。

 

…とはいえそれは権力側の発想。地べたをはいつくばりその日その日を必死に生きている人々のゼウス、キリストに対する怖ろしいほどのひたむきさと執着心には心打たれるものがあった。そしてそんな姿を文字通り”魂を削るような”演技で魅せてくれていた塚本晋也笈田ヨシ等の日本人キャストには圧倒された。

 

特に現代日本を代表する先鋭的な映画監督でもある塚本晋也の、予告編でも強烈な印象を残す水責めシーンは映画館の大画面で観ると、もう息が詰まるほどの迫力!

 

そしてこの物語のキーマンの一人、自分の家族やロドリゴまでも密告してしまい、そのたびに自責の念にかられロドリゴに罪を告白しにくる、というなんともやっかいで複雑な男・キチジローを演じた窪塚洋介の演技は間違いなく一見の価値があると思う。彼の会見での堂々とした発言からももう日本という狭い器に収まってる人じゃないな、と。これからどしどし世界の映画界で活躍してほしい。

 


窪塚洋介、スコセッシ監督に「驚がく、偉大」 ハリウッドへのアピール見抜かれた? 映画「沈黙-サイレンス-」初日舞台あいさつ1

 

 

作品の特色上なのか、いつものスコセッシ映画のような映像ギミックはかなり抑えられていたし、環境音のみで音楽という音楽すらほぼなかったのだが、要所要所で古い日本映画へのオマージュが感じられたのが面白かった。例えば霧の中の海を船で渡るシーンはまさに溝口健二『雨月物語』であったし、鬱蒼とした草むらで村人が語るシーンなんかは、新藤兼人『鬼婆』と思いだした。無類の映画マニア・スコセッシの面目躍如といったところか。

 

 

 

 

鬼婆 [DVD]

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…さて映画を観終わった後、しばし放心状態でジョン・レノンが語った

 

『宗教は人間の苦悩を計る概念だ』

 

という言葉を思い出していた。そしてその言葉を少しは理解できたような気がした。現世で苦しみながら救いを求めて生きる人たちと、目の前で苦しむ彼らに心の平穏を与えたいと願う人たち。共に命がけの純粋で壮絶な想いが産んだ悲劇がただひたすら哀しく美しく、2時間40分という上映時間があっという間であったよ。心から言わせていただきます、必見!

 

 

10nen-ishiue.hatenablog.com

 

 

『逃げるは恥だが役に立つ』は高齢童貞の自己嫌悪感を克服するドラマ…なのか!?

今クールのテレビドラマ界で話題になってる、といえば『逃げるは恥だが役に立つ』。

 

www.tbs.co.jp

 

実はこのドラマの脚本家である野木亜紀子が今年手がけていたドラマ”重版出来!”にえらく感銘を受けてたので当初から楽しみにしていたのだったが、正直ここまで人気が出るとは思いもよらなかった。

 

 

重版出来!  DVD-BOX

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さて星野源演じる主人公の津崎平匡は、35歳にもなって恋愛経験がない『プロの独身』という設定である。

 

プロ独身…すなわちそれは”プロの童貞”でもある(まさか風俗経験あり、つうわけじゃないだろうな!?)。

 

高齢童貞、といえばこのブログにて30歳まで童貞だったことを告白した、私10イシウエであるからして、かつて”プロ童貞”だった者として一言二言物申したい気持ちになったので久々にブログを更新してみたのである。

 

10nen-ishiue.hatenablog.com

 

 

いとも賢明なる童貞 ポーランドの宮廷における聖母マリアの礼拝音楽集

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先日放送された第7話では、とうとうガッキーこと新垣結衣が頭を肩に預け『(平匡とだったら)最後までいってもいいですよ…』なんて言わせておきながら、それを全力で拒むという全人類男子にあるまじき行為を行った津崎君。”それでこそプロ童貞!”…なんて褒めてる場合ではないのだが(笑)。ここまで頑なに恋人同士の関係を拒むのは、生真面目とか倫理観が強い、というより性に対する恐怖心&嫌悪感に凝り固まっているように見える。

 

ちなみに私自身のことを思い出してみると、20代の後半までちゃんとしたマスターベーションをしなかったのだった。今から思うとそうした行為にどこか後ろめたい嫌悪感を感じていたんだと思う、無意識的に。

 

マスタベーションの歴史

マスタベーションの歴史

 

 

はじめてマスターベーションをしたときは、布団にうつ伏せになり股間を押し付けながら手を使わず行ってた(いわゆる”床オナニー”)。それから手でしごいて…つうやり方に行きつくのは結構先の話で、なんで頑なにそうした基本的なやり方をしなかったのか、今から考えると不思議でしょうがない。

 

lite-ra.com

 

性嫌悪に陥る心のメカニズムは人それぞれあるんだろうけど、一つには”自己嫌悪感が強い”こともあるのではなかろうか。自分が嫌いだ、そんな自分が薄汚れた性に溺れてしまったらいっそう人間としてとりとめもなくみっともない、情けない存在になってしまう…根が真面目な人ほどそうゆうドツボにハマりそうな気がする。

 

 

あなたが生きづらいのは「自己嫌悪」のせいである。 他人に支配されず、自由に生きる技術

あなたが生きづらいのは「自己嫌悪」のせいである。 他人に支配されず、自由に生きる技術

 

 

 

極度の自己嫌悪感から自分を許せないまま生きてきた津崎君の前に現れたみくりちゃんは、はじめて自分の存在をまるごと受け入れてくれる存在なのだ。しかし人間はそれまでの生き方・状況を(それが良い方向であろうとも)変化させることに本能的な恐怖を感じる生き物。今後”逃げ恥”は津崎君が自身の恐怖心と闘い、どうそれを克服するかというストーリー展開になるのではないか?と密かに楽しみにしている。それは単なるラブコメディーを越える、現代人に共通する普遍的な問題提議でもあると思うのだが。

 

 

 

日本の”コクのある顔した男ども”はフリースタイル・ダンジョンに集まる

先日たまたまネットで見かけた記事が興味深かったのですよ。

 

indietokyo.com

 

 

現在好調といわれるイギリス映画界なのだが、世界的にヒットした作品を見ると”英国王のスピーチ””マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙”など上流階級を描いたものだったり、また活躍中のイギリス出身の人気俳優であるベネディクト・カンバーバッチエディ・レッドメイン自身が名門私立学校出身のエリート、だとのこと。

 

 

 

イギリスには巨匠ケン・ローチなどの監督を筆頭に、労働者階級の人たちの生活をつぶさにとらえる映画が作られ続けている伝統があるのだが、俳優養成学校は高額な授業料がかかることもあり、今やその手の作品にハマる、いわば生粋の”労働者階級出身”の俳優が少なくなってきている、のだとか。

 

 

映画でわかるイギリス文化入門

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もちろんベネディクト・カンバーバッチは素晴らしい俳優さんではあるんだけど、お顔立ちが綺麗すぎて、日頃パブで飲んだくれてる失業者のオヤジ役なんて到底似合いそうにないな、確かに。

 

またイギリス発のそうした下層の人たちを描いた映画自体、最近あんまりヒットした記憶もない。それこそ近々続編が公開される予定の”トレイン・スポッティング”ぐらいじゃなかろうか。

(とはいえ去年日本でも公開された、田舎の炭鉱町のストライキに都会のゲイたちが協力する”パレードへようこそ”はほんとに素晴らしかったし、もっとヒットしてもよかったと思うぞ)

 

 

パレードへようこそ [DVD]

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さてお話はここ日本でも同様で、近年の人気俳優の顔立ちを見てみると、雑種というか野良犬というか、まぁそうとしか表現できないような、なんともしれん『コクのある』雰囲気を醸し出してる人、というとなかなか思いつかない。例えば実は大企業である双日会長のご子息で若手随一の演技派、加瀬亮などは確かにそうしたバックボーンが窺える育ちのよさげなお顔立ちである。

 

 

Bellevue Ryo Kase―加瀬亮-写真+言葉+全作品

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いたいた! 中堅俳優の中では新井浩文はなかなか”コクのある”顔をしてるよね。そうだな、作業着が似合いそうな。

 

 

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しかしまぁコンプライアンスがどうのこうの、と叫ばれる時代の流れ的にそうした草食系男子的な顔立ちの俳優さんに人気が集まるのももっともなこと、かもしれない。ただ例えば”仁義なき戦い”に出演していた俳優たちが醸し出していたやさぐれ感や、幼い頃から恵まれない環境下で抑圧されていた鬱屈感をフェイクじゃなく全身で・気配で表現できる俳優が今どれくらいいるのだろう?と思うと少し寂しい気持ちにもなるのだ。

 

 

『仁義なき戦い』をつくった男たち―深作欣二と笠原和夫

『仁義なき戦い』をつくった男たち―深作欣二と笠原和夫

 

 

 

そういや、時にお笑いやミュージシャン系の人が映画やドラマに駆り出される背景には、順風満帆で育ちがよかった人には表現できないある種のニオイ・異物感を求められているのだろう。確かに今や引っ張りだこのピエール瀧の顔立ちは大卒インテリには決して醸し出せないのではなかろうか。

 

 

ピエール瀧の23区23時

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…さて長い前置きになったが、そんな現代日本において絶滅危惧種ともいえそうな”雑種どもがもがいてる様”をまざまざと見せつけてくる映像コンテンツがフリースタイル・ダンジョンであることに異論の余地はないのではないだろうか!!と声を大にして言いたい。

 

matome.naver.jp

 

 

二人以上のラッパーが即興でラップを交互に返しながら、その瞬発力やパフォーマンス性、そして語彙の表現力などを競い合うという、アンダーグラウンドなヒップホップのライブシーンでは長らく行われていたイベントを、地上波向けにリアレンジした形で放送する、という番組。

 

個性豊かで実力派なラッパーたちを”モンスター”と称し、チャレンジャーが彼ら一人一人を倒しながら勝ち進んでいく、なんてまるでブルース・リーの”死亡遊戯”のよう。そんな一般視聴者が入り込みやすいポップなアレンジを施した番組スタッフも相当切れ者だと思うが、それに加え日本のフリースタイルの先駆者であるMC漢を担ぎ出していたり、またジャッジマンに日本にヒップホップを輸入した張本人ともいえる”いとうせいこう”をちゃんと配していたり、またスチャダラパー一派のような所謂”オモロラップ”と強面のハードコアな連中とのいわば橋渡し的な存在であるサイプレス上野を登場させたり、とその手の音楽に一家言あるファンでも納得の幅広く隙のない配役もこの番組の成功の一因だと思う。

 

 

ヒップホップ・ドリーム

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んで、そうした中とりもなおさずなんといっても魅力なのは、一発ヒップホップドリームを掴むべく登場する、数々のラッパーたちの剥き出しで不敵な顔立ちなのだ。若きモンスターの一人、 T-pablowなんて甘さと危険な感じが相まったほんといい面構えしてるよな、と毎回惚れ惚れするし。

 

 

やはりこうしたバックボーンの連中に心惹かれる部分が大いにあるのは、私が新聞販売屋を営んでいた飲んだくれの親父の息子で高卒だからなのかもしれない。自分がとうに失いかけそうになっている、思い通りにならない社会に対するハングリー精神、百姓一揆的パフォーマンスをステージ上で爆発させている彼らをスマホ越しに観ることに、なにか希望のようなものを見いだしてるのかもしれない…などと思いつつ毎週放送日を楽しみにしているアラウンド40のオッサンの独り言でした、じゃんじゃん!