読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

ぱっとしないヴォーカリストは自分の声の”倍音”を気にしたらいいんじゃない?~中村明一著『倍音』を読んで~

本・漫画

 昨日久しぶりにフィッシュマンズのライブ盤聴いてたんです。

 

’98.12.28男達の別れ

’98.12.28男達の別れ

 

 

 ライブなんで途中に奇しくも99年に亡くなったヴォーカリスト・佐藤伸治氏のMCも収録されてるんですが、この人地声は結構低かったんですよね。

 

唄ってるときの声があんまり特徴的なんで、そのギャップに改めてビックリしたんですが、考えてみるとこの地声のままで唄っていたらフィッシュマンズはここまで支持されてたのかな?と思うんですよ。

 

そんなことを思ってたら、以前読んだこの本の事を思い出しまして。

 

倍音 音・ことば・身体の文化誌

倍音 音・ことば・身体の文化誌

 

 

現役の尺八奏者である中村明一氏の書。「倍音」にまつわる様々な話題を取り上げていて、知的好奇心がえらく刺激される良書。

 

で、この中に”大衆に支持される声”について非常に興味深いことが書かれてましたのでいくつかピックアップしてみたいと思います。

 

「倍音」とはなにか?

まずはこの本の主要テーマである「倍音」についての説明から。

 

 …一般的には、音は、ひとつの音として聞こえる場合でも、複数の音による複合音からなっている、ということです。「ひとつの音」と思って聞いてる中に、さまざまな音が含まれているのです。

音に含まれる成分の中で、周波数の最も小さいものを基音、その他のものを「倍音」と、一般的に呼び、楽器などの音の高さを言う場合には、基音の周波数をもって、その音の高さとして表します。

 

人間の聴覚の能力として、最も敏感な音域は3~4キロヘルツ、ですが人間の話す声は100から300ヘルツほどで結局声では3~4キロヘルツの音は出せない。

 

ただ枯れ木を踏む音、呼吸音、風音などは、この敏感な周波数帯域に表れ、原始時代、そうした音は危険を察知するなど生きていくために非常に重要だった。

この辺りの帯域を聞きとれるかどうかが、生死に直結していたのだ、と。

 

「倍音」の種類

 

 …倍音には大きく分けて整数次倍音非整数次倍音がある。

整数次倍音は、声や、弦楽器や管楽器の音の中に、自然に含まれているものです。そして、高次の整数次倍音の音量が多くなると、より硬い音、またはギラギラした音に聞こえてきます。

整数次倍音がギラギラした音をつくる一方、非整数次倍音を含む音は濁った音になります。ザラザラした、ガザガザした音、あるいは高次だとカサカサした音、という表現ができます。

 

例として取り上げているのが整数次倍音の成分が強い声の持ち主として、美空ひばり・郷ひろみ・浜崎あゆみなどの歌手や黒柳徹子・タモリが挙げられてます。

 

一方の非整数次倍音のの成分が強い声の持ち主は森進一・宇多田ヒカル、明石家さんま・ビートたけし、といった所謂ハスキー・ウィスパーヴォイスと言われる人たち。

 

整数次倍音を聞くと、私たちは荘厳な雰囲気を感じたり、自然を越えたもの、普遍性、宇宙的なもの、神々しさ、宗教性を感じる傾向があるようです。また、高次の整数次倍音を含む声で歌ったり話したりしているその人に対しても、カリスマ性を感じる傾向があります。

一方、非整数次倍音を聞いたときに生じる現象としては、自然を思い起こさせたり、「シーッ」という声が示すように注意を喚起させたり、また情緒性、親密性を感じたり、日本語においては「重要である」という意味を伝えたり、といったことがあります。

 

つまりこの二つの倍音成分を含んだ声の持ち主は自然と人々の注目を集めてしまう、”なんか知らないけど惹きつけられるなぁ”というわけ。

 

 件の佐藤伸治氏やその佐藤氏が多大な影響を受けた忌野清志郎氏の声なんかは高次の整数次倍音ですよね、でもその中にハスキー・ウィスパーな非整数次倍音の成分も入っている、という実に複雑で味わい深い声だったんだな、と

 

それを踏まえると洋楽だと例えばレディオヘッドのトム・ヨークなんて整数次倍音を含んだ声の持ち主の最たる人だと思うんですが、どうでしょ?

 


Radiohead/レディオヘッド - Creep - YouTube

 

…しかし多分佐藤氏は地声で唄ってもどうも引っ掛かりがないな、と薄々感じてたんじゃないでしょうか。それで試行錯誤して生まれたのがあの歌声だった、と↓

 


Fishmans - いかれたBaby - YouTube

 

神々しさ、宗教性すら感じさせる整数次倍音、そして親密さを感じる非整数次倍音が混ざり合った佐藤氏の声。そして浮遊感のある曲の雰囲気と歌詞の意味全てが折り重なってフィッシュマンズの音楽は時代を超えた普遍性のあるものになってるんだな、と改めて納得。

 

ちなみに私もつい最近までバンドやってて、自分のやってたことを振り返ってみて、また他のバンド観た時も思ってたんですけど、いくら曲がよくても演奏が上手くても印象に残らない、ってあるよな、と。でそれは結局”バンドの顔”であるヴォーカルの歌に問題があるんじゃないか、と。

 

それは唄が技術的に上手けりゃいい、ましてやルックスの良し悪しの問題、つう訳でもなく。やはりこうしたどうにも惹きつけられる歌声という要素が多分にあるのではなかろうか、と思う訳です。

 

ですから”人気でないなぁ”と悩んでいるヴォーカリストは、この本読んで自分の声の倍音について考えてみる、つうのもいいんではないかと思った次第。

 

まぁそれを置いといても”「倍音」から考察する日本人論”にまで話が広がってて、非常に刺激的な思想書としても読めるいい本なんでお勧めですよ!

 


タモリ、黒柳徹子を人気司会者にした「整数次倍音」の秘密:PRESIDENT Online - プレジデント

(↑この本の内容を著者本人が簡潔にまとめた記事を見つけたのでリンク貼っておきます)

 

 

↓追記(2015.3/11)このエントリーの続きを書いてます。あわせて是非お読みください!

 

10nen-ishiue.hatenablog.com

 

 

**************************************

※↓この本の著者・中村明一氏の本業、尺八の演奏を収録したCD。整数次倍音・非整数次倍音の量を自由にコントロールできる尺八の奥深さをこれでもか!と体験できる脅威の音空間。臨場感がハンパないです。

 

虚無僧尺八の世界 東北の尺八 霊慕

虚無僧尺八の世界 東北の尺八 霊慕

 

 


日記・雑談 ブログランキングへ