10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

安らかすぎる安楽死の瞬間に衝撃を受けた、というお話

こんなツイートがTLに流れてきました。

 

 


【衝撃映像】「安楽死」を選んだ女性が、安らかに眠る瞬間 | TABI LABO

 

映像を観てなんとも言いようのない静かな衝撃を受けました。

 

亡くなる(というか眠りにつく)寸前までアシスタントの人などと穏やかに談笑しているミシェル・コース氏。恐怖も痛みもなく、こうゆう日常と地続きな死の瞬間もあるのか、と。いろんな意見があると思いますが、個人的にはこの映像からは幸福感しか感じなかったですね。

 

…ところでこのニュースのことを知った時、思い出した小説があったんです。

それはミシェル・コース氏と同じフランス人で私の大好きな作家、ミシェル・ウェルベックの2010年に刊行された(日本語版は2013年)”地図と領土”。

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ミシェル・ウエルベック - Wikipedia 

(↑性格悪そーな顔してますな(笑) 

地図と領土 (単行本)

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 この中で主人公ジェドの父・ジャンが安楽死の為スイスに向かう、というニュースそのままのエピソードがあるんです。

 

写真を使ったコンセプチュアル・アーティストのジャド。キャリアウーマンで絶世の美女であるオルガという恋人がいるのだが未だ独身でどこか孤独の影が付きまとう男。優秀なギャラリストと共に巨額の資金が蠢く現代アートの世界で徐々に成功の階段を上がり始める。

ある日、個展の作品解説を頼むために隠遁生活を送る作家のウェルベック(!)とコンタクトを取る。同じ”孤独者”の彼との知的な会話の中で友愛の情を抱くジャド。しかしそのウェルベックは突然何者かに惨殺されてしまう。

捜査が難航する中、建設会社の社長でジャドにとって唯一の肉親である父・ジャンがスイスに旅だったことを知る。それは病気である自身の未来を案じた末、自殺幇助団体の施設に入所するためだった…

 

仕事人間で心の奥底を見せないジャンと心の距離を感じていたジャドだったが、父が安楽死の為スイスに向ったことに激しく動揺する。そして施設に乗り込んだジャドは秘密保持の為ジャンが死んだときの様子を話すことが出来ないと冷たく突き放す職員を思わずしたたかに殴るんです。

 

彼の興奮はたちまち醒め、あとには漠とした、深い悲しみが残った。それが消えることはないだろうと彼には分かっていた。パリに戻って三日後、人生で初めて、クリスマスイブを独りで過ごした。新年も同様だった。そしてそれに続く日々も、彼はやはり独りきりだった。 

 

何事にも淡々としているジャドがほぼ唯一エモーショナルになるシーンだったんですごく印象に残ってました。

 

ミシェル・コース氏はレズビアンだった、とのことなので子供はいなかったと思われるんですが、こういった肉親がいる場合の安楽死、というのはなかなか心情的に難しい問題があるんじゃなかろうか、と思うんです。

 

いくら生きることを放棄したくらい本人が苦しんでいた、としても近くにいる者の哀しみや割り切れない想いは相当深いものになるだろう、と。

 

まぁ自力で栄養を補充することすらできなくなった患者を無理やり(にしか見えない)方法で延命させることをよしとする日本でこうした安楽死が市民権を得ることはなかなか考えにくい部分があるんですが、いやだからこそもっと議論を深めるべきなのではないかと思うのです。

 

またもし今後こうした安楽死に対するハードルが下がるようなことが起こるとしても、その際には残される家族や親しい人間への心のケアも十分考慮すべきだと思いましたね。

 

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安楽死を選ぶ―オランダ・「よき死」の探検家たち

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世界の老後から 海外移住から安楽死まで、自分自身で描く死のデザイン 朝日新聞デジタルSELECT
 

 


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