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10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

サザンオールスターズの桑田氏は”日本語でポリティカルソングを唄う”という難問に挑戦している、というお話

80年代イギリスを代表するバンドの一つに”スタイルカウンシル”という人たちがいまして。

 

ザ・スタイル・カウンシル・グレイテスト・ヒッツ

ザ・スタイル・カウンシル・グレイテスト・ヒッツ

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”ザ・ジャム”という勢いのある3ピースバンドを率いていたポール・ウェラーが自身のソウルやジャズなど”黒人音楽”指向をより追求するために作ったユニットで、日本ではその口当たりのいいサウンドやスタイリッシュなファッションを決めたメンバーのビジュアルから”おしゃれ系”的な持て囃され方をされていました。

 

当時中学生だった私もそんな”こじゃれた”スタイルカウンシルの音楽をマドンナやマイケル・ジャクソンと同じく所詮”ポップス”だと思い、そこまでシリアスにはとらえてなかったんです。

 

でも彼らの歌詞には当時のサッチャー政権に対する痛烈な批判や労働者階級のやるせない憤りなどがダイレクトに盛り込んであり、実際はかなり硬派な唄を唄っていた、ということを知ったのは随分後になってから、でした。

 


The Style Council - Shout To The Top - YouTube

 

ポップソングにそういったメッセージを込めていたポール・ウェラーの真摯な態度に感動しつつも、ちょっと寂しく思ったのは”日本にはこういった社会問題・ポリティカルソングを歌うミュージシャンがほとんどいないなぁ”ということ。

 

…てなことを昨年末の紅白歌合戦のときのサザンオールスターズを観て思い出したんですね。

 

私はこの件で初めてサザンの新曲”ピースとハイライト”を聴いたんですけど、PVの方も各国首脳のお面をつけて喧嘩してたり、なんて彼らっぽいおちゃらけ演出でオブラートに包みつつも結構大胆に政治問題を盛り込んでる姿勢に正直ビックリしました。

 


サザンオールスターズ - ピースとハイライト - YouTube

 

今までも唄の中に風刺っぽく社会に対する憂いを込めていた桑田氏ですが、ここにきてここまで直接的に社会問題を取り上げたことはとても興味深いですね。

 


サザンオールスターズの「チョビ髭」紅白パフォーマンス、安倍首相批判と話題に

 

アーティストの勘というか嗅覚なんでしょうね、”今、ちょっとヤバくないか!?”という危機感をどうしても唄にして訴えたかったんだと思います桑田氏は。名実共に日本のトップバンドに君臨する彼らがこういった政治的なスタンスをはっきり表明する、というのはいろいろプレッシャーがあると思うんですけど。いやぁさすが、ですね。

 

…とここで話を戻しまして。

 

この”ピースとハイライト”も広義な意味でポリティカルソングだと思うんですけど、じゃあなぜ日本にはこういった唄が少ないのか?という問題。

 

『単に日本のミュージシャンに社会問題に対する意識が薄い人が多いから?』

たしかにそんな面もあるかも、なんですが、私が思うに日本語の特質的にポリティカルソングを作るのが難しい言語だからではなかろうか、と。

 

先日のエントリー”ぱっとしないヴォーカリストは自分の声の”倍音”を気にしたらいいんじゃない?~中村明一著『倍音』を読んで~ - 10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~”で取り上げた本『倍音』に興味深い記述がありましてね。

 

 日本語に翻訳されたオペラを観たときに、何か、しっくり来ない可笑しい感じがする…

それは言語の意味と音響がそれぞれ独立している西欧の言葉にくらべ、日本語は言葉の論理的構造(意味)とその伝達のされ方(音響)が強く結びついてるから。

 

例えば日本語で”助けて~”と言う場合、そこには”助けを求めている”切迫した音響的な響きが含まれて初めてその意味が理解できる。それがオペラのように”助けて~”にメロディーをつけてしまうと、

頭の中で論理的な意味と、それを伝える音響が、齟齬をきたすのです。

相反する二つの意味をどう処理してよいかわからず、私たちは、くすぐったいような変な感じになってしまいます。

これが、時として、日本語オペラの妙なおかしさを引き起こすのです。

 

これをポリティカルソングに当てはめると、明るかったり爽やかな曲調のメロディーに重い社会問題を唄っている真面目な歌詞が乗ると、日本人は頭の中が混乱して妙なおかしさを感じる、のではなかろうか。

 

スタイルカウンシルのように”曲調はめちゃノリノリなのに歌詞はスゲェ辛辣で真面目”つうのは英語だから違和感がないのだ、日本語で真面目な唄を歌う場合はそれに似合ったメロディー・アレンジでないとなんだか気持ち悪く感じてしまう、というわけ。

 

…しかしよくよく考えると日本のミュージシャンでサザンの桑田氏ほど、この問題に取り組むべき最適な人もいないんじゃなかろうか、とふと思ったんですよ。

というのもときに日本語の意味を完全に無視し、その響きだけに注目して歌詞をこしらえてしまう、という離れ業も桑田氏の十八番。彼ほど活動初期から”いかに日本語をメロディーに乗せるか”の実験を過激に繰り広げていた人もいないじゃないですか。

 

 

桑田佳祐言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん

桑田佳祐言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん

 

 

今回の”ピースをハイライト”はそんな”ポップソングにどう政治的な日本語を乗せるか?”というたいへん挑戦的な実験を紅白という日本中が注目するステージでやりきってしまった桑田氏はやっぱり根がとんでもなくアヴァンギャルドな人なんだな、と改めて感じた次第、なのです。

 

 

倍音 音・ことば・身体の文化誌

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