10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

飛び立て!”存在しない男”よ!~映画”バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)”~

昨日ずっと観たかった”バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)”をやっと映画館で観ることができました!

 

www.foxmovies-jp.com

 

最初、『かつて”バードマン”というアメコミ原作の映画に主演し、ヒットを飛ばしたもののその後キャリアがパッとしなかった映画俳優が再起を賭けてブロードウェイで芝居をする』というこの映画のストーリーを聞いたときは思わず笑ってしまいましたよ。だってそれって”バッドマン”で一躍スター俳優になった、主役を演じてるマイケル・キートンほぼそのまんまなんだもん。

 

バットマン [DVD]

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どうやらはじめにこの映画の話が来たときマイケルは『ふざけるな』って怒ったらしいです。そりゃそうですよね、”かつてはスター、今は落ち目”って自分で認めたくないことをずばり指摘されたんですからね。

 

でもそんな自身のこだわりを捨て文字通り渾身の演技を見せてくれたマイケル・キートン、ほんとに素晴らしかった!もし彼が出演しなければ多分この映画は作られなかっただろうし、よしんば別の俳優だったらここまで観る者の心に迫る映画にはならなったはず。この”映画の主役と演じる者のリアルな人生がシンクロしてる”といえば、製作当時は完全に干されていたミッキー・ロークが同じく再起を賭けたレスラーを演じたその名も”レスラー”もそうでしたよね。

 

レスラー [DVD]

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 ところでこの映画でまず私が面白い、と思った点はマイケル扮するリーガン・トムソンが自身で脚本・演出そして出演するのがあのレイモンド・カーヴァーの短編小説の舞台化、という設定。私、カーヴァーは好きで読んでたんですが、どちらかというと同業者である小説家にリスペクトされている、玄人受けのいい作家というイメージ。そんなカーヴァーにわざわざ手を出すあたりが『自分を本物の役者と認めて欲しい』というリーガンの内なる”ハイアート”に対するコンプレックスを感じさせるんですよね。そもそも映画俳優なんだから門外漢である演劇ではなく映画の世界で再起を計ればいいのに、つう話でもあるし。

 

愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)

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そんなリーガンの歪んだコンプレックスはエドワード・ノートン扮する、才能はあるが問題行動ばかり起こす共演俳優・マイクや辛口で有名な演劇批評家にズバリ見透かされて、ますます追い込まれてしまいます。

 

面白かった点その二。リーガンにはバードマンの幻聴がたびたび聞こえてきます。それはバードマンとして現れる”もう一人の自分”、普段押し殺している不安感だったりやり場のない憤りだったり『現実見ろや』という皮肉めいたセルフツッコミをリーガンに突き付けてくる、実にやっかいな存在。

 

映画の中盤でその声に耐えられなくなり錯乱したリーガンが楽屋をメチャメチャに壊すシーンがあるんですが、私はもう背筋が凍るような気持ちになりましたよ『この心境、わかるわ…』って。

 

 長い間生きてきたけど、結局自分は何を手に入れることができたのか?幸せになれたのか?何かを成しえたのか?誰かに愛されたのか?そしてこんな自分はまだ愛される資格があるのか?老境に達し、ひとかどの成功は収めたものの、いまだ世間からは二流というレッテルを押され、かつ最早”存在しない男”になりつつあるリーガンの悶え、足掻きがいちいち身につまされて仕方なかったですわ。

 

しかしそんな重々しい”精神の危機”を描いてるこの映画、実は笑えるコメディーになってるのがまたいいんですよ。リーガンが舞台の上演中に楽屋から締め出されて人々でごった返すブロードウェイをパンツ一枚で歩くシーンなんて腹抱えて笑いました。

 

そんなわけで今まで演劇の舞台裏を描いた作品って結構あったけど、この映画のような斬新なアプローチも残ってたんだな、という驚きがありましたね。これはひとえに舌を噛みそうな名前であるアレハンドロ・ゴンサレス・ イニャリトゥ監督の剛腕によるものでしょう。”ゼロ・グラビティー”のアルフォンソ・キュアロンもだけどメキシコ出身監督の才気はすさまじいものがあるな、と。

 

matome.naver.jp

 

あと話題になってる”全編ワンカットに見える撮影手法”ですが、それほど手間のかかる撮影法であるにも関わらずあまりにもスムーズだったんで観てるうちに長回しで撮られてることがまったく気にならなくなっていました。私的にはそれよりも絶えず流れている超絶グル―ビーなジャズソロドラムのサントラがほんとに生々しくて最高にカッコよかった!これは是非素晴らしい音響設備である映画館で体験してほしいな。

 

Ost: Birdman

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 ここまで書いてきて観てない人には相当クセのある映画だと思われたかも、ですが、いささか陳腐な物言いですけど『いくつになってもチャレンジすることの尊さ』を観る者に問いかける極上のエンターテイメント、そして人間賛歌であったと、そう私は思ったのです。もし今現在すこしでも自分の生き方に迷ってる人なら観てるうちになんだかえもいわれぬ勇気をもらえるかもしれない、そんな映画ですよ。お勧めです!

 

 


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