10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

”左寄り”ですが何か問題でも?~『ザ・レフト UK左翼セレブ列伝』を読んで~

先日「ねぇ?”左翼”って何?」と嫁に聞かれましてね。「君はそんなことも知らないのかい?もっと社会について勉強するべきだよ…」などとしたり顔で講釈たれつつも、内心自分の中では当たり前のように分かりきってたつもりで使ってた単語だったんですが、いざ簡潔に説明することができなかったんですわ。

 

”社会主義者”?、”平等主義者”?、”反権力”?はたまた”アナーキスト”?、”テロリスト”!?…

 

どの言葉もなんかしっくりこないし、また昨今”左翼”って『なんにでもとりあえず反対する、なんだか面倒な人たち』つうイメージで語られたりもしてるような感じがするけど、いやいやそうじゃないだろ、という気もするし…

 

そんなとき折しも読んだのが、イギリス在住の保育士兼ライター、ブレイディみかこ氏の著作”ザ・レフトーUK左翼セレブ列伝”

 

ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 (ele-king books)

ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 (ele-king books)

 

 

この中で左翼=”革命バカ・平等バカ”という言葉が出てきて、思わず膝を打ったんですよね。あ、それじゃね~か?!巷の人たちの”左翼”に対するイメージって、と。

 

 

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

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左翼はなぜ衰退したのか (祥伝社新書)

左翼はなぜ衰退したのか (祥伝社新書)

 

 

 

”ザ・レフト…”はイギリスで活躍し、左寄りの発言や活動に勤しむセレブリティー12人を取り上げたエッセイ集。その中で日本人に馴染みのある人、といえば”ハリー・ポッターシリーズ”の著者、J・K・ローリングや”Mrビーン”でおなじみのローワン・アトキンソン、映画”ロード・オブ・ザ・リング”のガンダルフ役、イアン・マッケランでしょうか。

 

またブリティシュカルチャーにある程度精通してる人なら、元ザ・スミスのヴォーカル、モリッシーやハッピーマンデーズのメンバー、ベズ、また”トレインスポッティング”の監督で先日のロンドンオリンピック開会式の演出をしたダニー・ボイル、あともっと詳しい人ならイギリス映画界の至宝、ケン・ローチはご存じのことでしょう。

 

 

ケン・ローチ (映画作家が自身を語る)

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  • 作者: グレアムフラー,Graham Fuller,村山匡一郎,越後谷文博
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本場イギリス人ですら『あいつらはマジで”ヤバい”人相してる』と言われるハッピーマンデーズのベズ(バンドなのに唄わず楽器も弾かず、ただマラカス持って踊ってるだけ、という電気グルーブのピエール瀧氏的なポジションの人)がなんと2015年の総選挙に立候補してる、つう話に笑っちゃったり(いいのか?だってジャンキー丸出しなのに…)、”中年以降、時事ネタに対するヒステリックなまでの毒舌発言が目立ち、時に時代錯誤と言えるほどのレフトな発言をするかと思えば、いつの時代の爺さんなんだよと突っ込みたくなるようなコテコテの右翼発言も飛び出す”と形容されている、言いたい放題なモリッシーって相変わらず面白い人だな…などとブリティシュロックに多大な影響を受けた私としては読みどころ満載な本、なんですけど。

 

 


Happy Mondays // Kinky Afro // Kendal Calling 2014 ...

 


Morrissey - Everyday Is Like Sunday - Glastonbury ...

 

 

さて2012年のロンドン・オリンピック開会式では、次々と登場するホップスターたちやエリザベス女王がパラシュートで降りてくる!なんて奇想天外な演出もさることながら、産業革命時の労働者たちや、医者と看護士が子供たちが眠るベッドのまわりを踊る、という1948年に発足された国民総医療サービス”NHS”を表現したパフォーマンスがとても印象に残りました。なんでって、この資本主義全盛のご時世に、いってみれば”社会主義的”モチーフである労働者や医療費無償制度をオリンピックという舞台で前面に押し出したことがえらく大胆、かつ若干唐突に思えたから。

 

 

London 2012 Olympic Games [DVD] [Import]

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 (↑久しぶりに開会式の映像観直したけど、ブリティッシュポップの歴史をミュージカル仕立てで振り返るパフォーマンスがめちゃくちゃカッコいい!東京オリンピックでもさぁ、ちょっと頼むよ~)

 

 

それはアイルランド移民の息子で典型的なワーキングクラス出身である、開会式の総監督、ダニー・ボイルのいわば”平等バカ”・左翼指向の強烈な発露だったわけで、いやはやそういったモロに政治的な色合いの濃い演出をオリンピックで表現できる、つうか許してるイギリスの器のデカさをまざまざと見せつけられた瞬間でもあった、と思うのですよ。

 

キャピタリズムを形而下の事象(金、数字)に拘泥する思想だとすれば、人の平等や弱者救済を提唱する思想(弱肉強食を否定する考え方)は、形而上の事象を重んじる世界ともいえる。政治というのはどうしても商人の世界に傾きがちだ。それもその筈で、政府というのは正しい投資分野を決断して国を効率的に回すという、まさに究極のビジネス運営というか、国という企業の運営だからである。

 

左翼、という言葉は「なんでもかんでも平等にしたい奴ら」とか「ドリーマーの思想」とか言われがちだ。…しかし、なぜにそういう蜃気楼のようなコンセプトを人が追うのかと言えば、それは人が金や飯と言った見えるものだけのために生き始めるとろくなことにならないからだ。たとえ無理でもメタフィジカルなものを志向する姿勢だけは取っておかないと、人間は狂う。

 

↑ここに引用した言葉はほんとに溜飲が下がる、というか”その通りだ!”と思わず叫びたくなったよ。偽善的だろうが夢物語だろうが非効率的だろうが、人類皆平等、弱い立場の人たちの救済、差別の撤廃、表現の自由などをいつだって我々は求めていかなければならないんだよ。で、それが”左寄り”って言われるのなら『そうですね、でも何か問題ある?』と思うのです。なにかと外国を誉めそやすのもなんだか癪ではあるけども、この本を読みながらやはり著名人でも自身の立場に臆さず堂々と政治的発言を行う、イギリス人の精神性には見習うべきところが多々あるなぁ、なんて。

 

 …ちなみに来月にイギリスで行われる総選挙では、右翼政党UKIPの台頭や女性党首が率いるスコットランド左派政党SNPの動きなどが非常に注目されている、とのこと。なんか昨今の日本の状況を顧みると、とても対岸の火事とは思えないんでたいへん動向が気になるところですね、ハイ。

 

bylines.news.yahoo.co.jp

 

↓※2015.6/27 先日のイギリス総選挙後にブレイディみかこ氏が『ザ・レフト』に登場したセレブのその後を書いたエッセイ。

 

www.ele-king.net

 


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