10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

平凡な大学教師の一生を描いた感動的な小説~ジョン・ウィリアムズ著『ストーナー』~

アマゾンって”おすすめ商品”が出てきますよね。私の場合おすすめされるのが、ほとんどグラドルのDVDだったりするんですが(どんだけチェックしてるんだか)。

 

あるとき、見知らぬ外国文学本が表示されていたのです。それが今回紹介するジョン・ウィリアムズ著『ストーナー』。

 

ストーナー

ストーナー

 

 

最初『”ストーナー”ってヘビーで重いギターリフが特徴の”ストーナーロック”のこと?てか著者の”ジョン・ウィリアムズ”って映画音楽作曲家で有名なあの人!?』って思ってたんですが、覗いてみるとどうやらロックとも映画音楽とも全く関係のない内容のようで。なおかつ読んだ方々の熱いカスタマーレビューがいくつか載っていてとても興味を惹かれたのです。が、いかんせん2000円台のハードカバーということもあり、なかなか思い切って購入するボタンをポチっとな!ができずにいました。

 

 

ジョン・ウィリアムズ―スター・ウォーズを鳴らした巨匠

ジョン・ウィリアムズ―スター・ウォーズを鳴らした巨匠

 

 

 

さてその後、たまたまツイッターで書評家である豊崎由美氏のこんなツイートを目にしまして

 

 

ライムスター・宇多丸氏のファンでもある私なので、いよいよこれは読んでみないとな、という思いに駆られて先日ようやく手に取り、今しがた読み終えたとこ、でございます。

 

miyearnzzlabo.com

 

で、結論を言うと、これ傑作!アマゾンさん、グラドルのDVDばっか勧めないで、たまにはこうゆう良質なガイブン頼むよ!マジで買ってよかったYO!

 

1910年アメリカはミズーリ―大学に入学したウィリアム・ストーナー。農民の両親の一人息子として育ったストーナーは当初、農学部に入るがアーチャー・スローンという講師が務める英文学に興味をそそられやがて親に内緒で転部する。

 

ときは第一次世界大戦。学友は次々と兵隊を志願するがストーナーは兵役を拒否、またスローンの勧めでそのまま大学に残り、教育者の道に進むことになる。

 

講師になったストーナーは、ある日知り合ったイーディスという女性に恋をし結婚するが、二人の関係は虚栄心が強く病的なヒステリーを持つイーディスの不可解な行動のおかげで始めから不穏な空気に包まれる。

 

グレースという娘が誕生し、自身の仕事に邁進するストーナー。大学ではかつての同友・フィンチが学部長に昇進、ストーナーも助教授として終身在職権を得ることができた。

 

しかし同僚であるローマックスが可愛がっていた生徒の処遇の件で、ローマックスと決定的な仲違いを繰り広げたストーナーは、それが元でさらなる昇進は望めなくなってしまう。

 

「行く手には期して待つ何ものもなく、来し方には心温まる思い出などなきに等しかった」という諦めの境地で迎えた40代、ストーナーは年下の講師、キャサリン・ドリスコルとの情熱的な恋に目覚めるも、周囲の軋轢に耐えきれず別れてしまうのだった…

 

 

この後もストーナーの死去のときまで物語は続きますが、あらすじの説明はここまでにしておきます。ところで私の書いたあらすじを読むかぎりだと”平凡な大学教師の平凡な人生の物語”と思われるかもしれませんね。実際この小説が発表された1965年、いくつかの書評に取り上げられたものの、著者の死後は顧みられることもなく忘れ去られた、とのこと。地味すぎたんでしょうか。

 

しかしこの『ストーナー』、2006年に復刊され、2013年には『贖罪』で有名なイギリスの小説家、イアン・マキューアンが本書を絶賛したことでイギリス、そして本国アメリカでもベストセラーになった、というひじょうに数奇な運命を辿ったのです。

 

 

贖罪

贖罪

 

 

 

大学での学問と家庭の不和に悩まされ続けるストーナーの一生ですが、学内の闘争シーンはまるで法廷小説のような緊張感だし、またキャサリンとの不倫は、なんとも甘く切ない恋愛小説の趣。優雅で格調高い語り口で”生きること”の苦みを綿々と書き記しながらも、それ以上の実に複雑で味わい深い、ある種の清々しい読後感を我々に与えてくれるとこが素晴らしくて、多分私はこれからの人生で折に触れてこの小説を読み返すだろう、と思うのです。

 

さらにこの小説は、翻訳家である東江一紀氏の生前最後の仕事だったそうで、その経緯が書かれたあとがきは、ちょっと涙ものの内容になってます。これは是非手に取って確認してほしいですね。

 

togetter.com

 

最後に、東江氏の愛弟子の一人である布施由紀子氏が記した、あとがきにこの小説を語るのに相応しい一節が書かれていたので引用したいと思います。

 

人は誰でも、思うにまかせぬ人生を懸命に生きている。人がひとりで生きるのは、それ自体がすごいことなのだ。非凡も平凡も関係ない。がんばれよと、この小説を通じて著者と訳者に励まされたような気持ちになるのは、わたしだけだろうか。

 

 

 ※↓東江氏の翻訳本のひとつ。これ、ミステリー好きな友人に勧められて読んだことありました。オモシロかった!

 

ストリート・キッズ (創元推理文庫)

ストリート・キッズ (創元推理文庫)