10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

米オルタナロック界の”ゴッド姐さん”、キム・ゴードンの自叙伝”GIRL IN A BAND”を読んだ

私が10代だった20年以上前は言うまでなくインターネットなど存在してなかったので、海外の音楽情報は雑誌を頼る他なかった。(たまに深夜の音楽系のテレビ番組もあったけど、私の地元では放送が不定期だったな)

 

その当時、私はロッキンオン信者だったのだが、ロッキンオンが網羅しない、よりアンダーグランドな情報というのもあって、それを摂取できるのは今は亡き”フールズ・メイト””DOLL”(※フールズメイトは途中から所謂”ヴィジュアル系”を取り上げる媒体に大変身して、今もウェブで存続中)。本屋の陳列棚ではロッキンオンも相当アングラな雰囲気を醸し出していたのだが、この二つの雑誌はそれを上回る”ヤバさ””いかがわしさ”をプンプン匂わせていた。

 

私はフールズ・メイトやDOLLはたまに立ち読みする程度だったんだけど、ある日の記事で、とあるアメリカのインディーバンドの来日の記事が載っていたことを今でもうっすら憶えている。

 

そのバンドの名は”ソニック・ユース(Sonic Youth)”。中坊ゴコロに『なんちゅうカッコいいバンド名だ!』と、その激しいステージングを想像させるモノクロ写真を眺めながら思ったものでした。

 

 

シルヴァー・ロケッツ、クール・シングス ?ソニック・ユースの20年? [DVD]

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しかし当時アメリカのインディーバンドのレコード(CDはまだなかった)は、そうそう容易に手に入れることもできないし、ましてやラジオやテレビで流れることもないから彼らが一体どんな音楽をやってるのかすらも分からない。それに彼らに対するファースト・インパクトは犯罪都市・おっかない・危険、といった80年代ニューヨークのそれと完全に重なるもので、日本の地方都市でノホホンと暮らしていた私には所詮遠いところのお話として、地続きのリアリティーを感じなかったんですよね。

 

そもそも、その当時は”引きこもりの文学青年”という触れ込みで登場したヴォーカリスト、モリッシー率いるザ・スミスやメランコリックなメロディーとダンサブルなシンセサウンドが融合したニュー・オーダーなどイギリスのバンドの方によっぽどシンパシーを感じてたので、なけなしの小遣いはそちらに流れていたのでした。

 

後から思うと、ソニック・ユースが登場した80年代のアメリカのロックシーンはメインストリームで流行っている音楽と真っ向から対抗するようなハードで実験的なバンドが、地道なライブ活動で草の根的な活動を繰り広げていて、その後の90年代初頭、ニルヴァーナの大ヒットにより沸き起こった”グランジ””オルタナティブ・ロック”の一大ムーブメントの下地を築いていた時期であった。その頃の得体の知れない空気感をリアルタイムで追体験できなかったのは若干悔やまれるな、と今にして思うのです。

 

 

アメリカン・オルタナティヴ・ロック特選ガイド

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さて前置きが長くなりましたが、2011年残念ながら解散してしまったソニック・ユースでのベース担当、そして日本においてはもしかしてファッション・ブランド”X Girl”の発起人という顔の方が有名かもしれないキム・ゴードンがこのたび自伝を発表した、とのニュースを知り、ずっと楽しみにしていた私。先日やっと邦訳本が発売されたので早速ゲットしました。

 

 

GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝

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X-girl 2015 SUMMER SPECIAL BOOK (e-MOOK 宝島社ブランドムック)

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 (↑※ちなみにXgirlの権利は日本の企業に売却したそうで、現在キムは無関係とのこと)

 

 

 解散の原因となった、同じくソニック・ユースのギタリストであるサーストン・ムーアーとキムの離婚、というニュースには私を含め、日本のロック・ファンの多くが心底驚かされた。だって彼ら夫婦は”アメリカ・オルタナロックシーン随一のおしどり夫婦”と形容され、その生き方はある意味音楽好きの憧れでもあったのだから。

 

それはまさにキム自身が自伝の中で

 

(自分たちは)これまで都会に住んできて、子どもをもうけてロックンロール・ベイビーを育てようとしている、自分たちの親と同じようには年を重ねたくない、遅れてきたベビーブーマー世代の人生と相交わったようだった。

…40代になっても50代になっても、彼らは心の火種を、立てた中指を、冷笑を、日々の暮らしの下に隠しもち続けている。時を重ねるうちに、サーストンと私は多くの人にとって、そういった感覚を象徴する存在になっていたようだ。

 

と冷静に分析しているように。

 

だからもちろんこの自伝に興味持ったのは、彼女たち夫婦に起こったことを当事者の言葉で知りたい、という若干ゴシップな気持ちもあった。それに対しては正直『ここまで書いていいの!?』つうくらい、あけすけで私情むき出しな告白が書かれていたので逆にビックリしたんだけど。(キム姐さん、サーストンに浮気されて気の毒とは思うけど、夫宛のEメールを勝手に覗くのはどうかと思うよ)

 

それとは別に私的に面白かったのは、元々アートスクールで学んでいたキムが青春時代交流してた、若き日の現代アーティストたちの豪華なこと!

ダン・グレアム、トニー・アウスラー、ジャン=ミシェル・バスキア、マイク・ケリー(彼とは一時恋人関係だった)、ジェニー・ホルツァー、ジェフ・クーンズ、ジュリアン・シュナーベル、ゲルハルト・リヒター、レイモンド・ペディボーン…

 

その交流録を列挙するだけで80年代以降の現代アートの巨大な相関図が作れるくらい。ソニックユースのアルバムジャケットはアーティストの作品が多かったのは、キム姐さんの審美眼によるものだったんだな、と改めて感心しましたね。

 

 

現代アート事典 モダンからコンテンポラリーまで……世界と日本の現代美術用語集

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しかし読み進めていくうちにライブでは終始、無表情でおっかない雰囲気すらあるキム姐さんの知られざる内面は、教養のある中流階級出身の、とても繊細でときに痛々しいほど傷つきやすい知的な女性という、あのパンクでクールでタフな印象とは幾分違ったものでした。ソニック・ユースのファン、また90年代にロックを聴きまくってた”元・インディーキッズ”な人たちならもちろんですが、『たまたまロックバンドが仕事になってしまった、アート好きな女の子』、キムの今を生きる女性の生き様、としてもとても読み応えのある本だなぁ、と感じたので多くの人に勧めたい、と思った次第であります。

 

 

↓初期の破天荒すぎるライブ!


Sonic Youth - "Silver Rocket" (Live) - Night Music ...

 

 

↓後期の大人なステージ。これもまたいいね。


sonic youth live - YouTube

 

 

↓ソニック・ユース、といえば変則チューニングの可能性を極限まで追求したロック・バンド。この本は変則チューニングの不可思議な世界をCD付きで分かりやすく解説してます。私もこれに感化され、バンドの曲作りで応用してました。

必修!変則チューニング便利帳 CD付 (Cherry lane music)

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