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10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

67年版”日本のいちばん長い日”を観て圧倒されたよ!というお話

日本映画 独り言

 私が日本のものより、どちらかというと海外の文学を好む理由の一つは『未知なる国の文化や流行や人の生活などを追体験できる』から、というのがとても大きい。

 

40年以上暮らしている、ここ日本の勝手知ったる物事をあえて読んだりしても、まぁ新鮮な驚きなど感じないだろう、という気分で後回しにしてたきらいがあったのです。

 

先日芥川賞にお笑いコンビ”ピース”の又吉氏が受賞しました。彼の愛読書を拝見してみると、そのほとんどが日本文学。それも私が今まで手を付けてないものばかり。

 

matome.naver.jp

 

 

思春期の悩める青少年なら確実に通過してるであろう太宰治も、定番である”人間失格”をやっとこさかろうじて読んでる程度。我ながら情けない…

 

映画にしても然り。特に古い日本映画は黒澤明の名作”七人の侍”すらも実は割とここ最近観た、ってくらい疎いジャンルなのです。

 

しかし、先日とある古い日本映画を観まして『私、日本のことなんでも知ってた気になってたけど全然だわ…』と今更ながら痛感したと共に、『こんな面白い映画を今まで見落としてたなんて!』と少し後悔の念すら沸きあがってきましてね。

 

日本のいちばん長い日 [東宝DVD名作セレクション]
 

 

 

1967年に東宝の創立35周年記念として製作された映画”日本のいちばん長い日”。この映画は今夏新たにリメイクされて公開される、ということで話題になってます。

 

 

nihon-ichi.jp

 

 

私もこのことがきっかけで67年版『日本の…』を観てみよう、と思った次第。逆にいえばこんなきっかけがなければ未だに観てなかったかもしれません。(※これから映画のネタバレ的なことを書くので、これからこの映画を観る方、そして8月に公開されるリメイク版を観る方はスルーしてもらったほうがいいかも)

 

 

***************

 

 

さて、この『日本のいちばん長い日』は1945年、終戦を決定づけた昭和天皇の玉音放送がラジオで流された8月15日正午までの24時間を描いたドラマ。原作は半藤一利氏のノンフィクション小説です。

 

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

 

 

 

太平洋戦争の終戦のことは、もちろん授業で習ってるし、あの玉音放送の様子も当時の記録映像などをニュースで観てたので当然知ってる気でいたのですよ。

 

でも、その放送を阻止しようと15日未明に一部軍人がクーデターを起こし、なんと宮内庁や宮城(皇居)にまで押しかけたり、当時の首相であった鈴木貫太郎の官邸や私邸まで襲撃していた、という史実、そしてここまで玉音放送自体が危ぶまれる事態が進行してた、ということは全く知らなかった。

 

 

…さてこの映画の前半は、連合国側から突き付けられた”無条件降伏”という条件を飲むのか飲まないのか、という苦渋の決断を決めるため延々会議している鈴木内閣の様子が描かれます。実は内閣内であんまり議論がまとまらないんで、結局昭和天皇に終戦のお言葉を直接言っていただく、所謂”聖断”を二回も行っているんですよね。正直この後の歴史上の顛末を知ってる我々は

 

『二度も原爆落とされて尊い人命が多数亡くなってるのに今更迷ってる段階じゃないだろ。早く結論決めんかい~!』とまったくもってイライラさせられるんですが。

 

聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎 (PHP文庫)

聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎 (PHP文庫)

 

 

そんでポツダム宣言を受けいれた後、終戦の詔書に関する細かい言葉使いをどうするか、で閣僚が揉めるシーンでも、こうしたツマラン体裁にこだわるしょーもない手続きは今の日本でもなんも変わってないなぁ、とまじでイライラ。つまり2時間半以上あるこの映画の半分以上はこうしたノロノロした展開に終始イライラさせられるのですよ。(もちろん三船敏郎氏を含めた当時の日本映画界きっての名優たちの重厚な演技合戦は見どころなんですけどね!)

 

ただこの前半のフラストレーションが溜まる室内劇を見せられたことにより、武装した軍人たちの決起、そして玉音放送ははたして敢行されるのか?を描く後半がとんでもなくサスペンスフルに盛り上がるんですな。

 


終戦の詔勅・天皇陛下玉音放送・1945・8・15 - YouTube

 

 

特に驚いたのは、玉音放送のために天皇のお言葉をレコードに記録し、翌日の放送まで宮城(皇居)の侍従がとある事務室に厳重に保管するシーン。その後、そのレコードを奪うため陸軍の兵士があら捜しして、その保管した侍従の一人も問い詰めるんですよね。

 

2010年に亡くなられた小林桂樹氏がその侍従を演じてるんですが、彼が兵士に殴り倒されても頑として玉音レコードの在り処を教えなかったこと、その命がけの行動のおかげで玉音放送が滞りなく執行されたのだな、と。

 

また黒沢年男氏が演じた、このクーデター未遂事件の首謀者の一人・陸軍省の畑中健二少佐が半狂乱になりながら(この狂気に満ちた演技が最高!)放送局に押しかけ、アナウンサーに『(自分たち)軍の声明を放送しろ!』と詰め寄るシーンで、そのアナウンサーが『あなたの命令には従えない』と拒否するところもすごかった。(アナウンサーを演じた、若き日の加山雄三氏が超カッコいい!)

 

※あと付け足すと、鈴木首相官邸及び私邸を襲った、横浜警備隊隊長・佐々木武雄隊長役をあの”仮面ライダー死神博士”の天本英世氏が演じてるんですが、これがまた強烈!実生活では筋金入りの反政府主義者として有名だった彼がキ〇ガイじみた愛国者を演じてるのが面白い。リメイク版でこの役をだれがするのかすごく気になる!

 

 

…しかし、そもそも宮城に集まった兵士に対し『私が直接かけあってなだめよう』とおっしゃった昭和天皇も命を懸けている。そう、数多くの人たちの命がけの決断により、”一億総玉砕”なんてムチャクチャな暴言がまかり通っていた空気の中、あの戦争を終結させることができたのだ、その重さが映画の画面からほとばしっていて息苦しくなるほど。

 

 

しかしなんといってもこの映画がこれほどの切迫感をもった完成度を誇っているのは、製作陣や俳優たちの中に実際に戦争を経験した人たちが多くいた、という事実からなのだと思う。今回のリメイク、戦争の悲惨さを身をもって知ってる人々が作り上げた作品に戦争を知らない世代の映画人が対峙することは容易なことではないでしょうが、このきな臭い時代にこうゆう題材の映画を世に放つことはとても重要な意味があると思うんです。

 

とにかくこの映画を観れば、いかに多くの犠牲の上で今の平和な時代が築き上げられたのか、ということを考えずにはおれません。そして今回のリメイクがどのようにこの傑作をアップデートしているのかも期待大、なのです!

 

 


映画『日本のいちばん長い日』 特報 - YouTube

 

 

↓原作者・半藤一利氏のインタビュー。『戦争ははじめるのは簡単だけど、終わらせるのはたいへん』という言葉が刺さる。

www.sankei.com

 

 

↓徹底抗戦を唱える部下たちと悪化する一方の戦局の板挟みになった、終戦時の陸軍大臣・阿南是幾。自決する直前、映画の中で三船敏郎氏扮する阿南が吐露するセリフに涙を禁じえなかった。

一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾 (PHP文庫)

一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾 (PHP文庫)

 

 

 

 ↓映画での阿南是幾がなんだかカッコよすぎない?と思われた方は阿南氏の実像に迫るこんな本も。

長沙作戦―緒戦の栄光に隠された敗北 (光人社NF文庫)

長沙作戦―緒戦の栄光に隠された敗北 (光人社NF文庫)

 

 

終戦クーデター

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