10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

”張り込み日記”~50年以上に渡って忘れ去られていた実際の殺人事件を追った実録写真集が面白い!~

今週のお題「読書の夏」

 

先日、久しぶりに街中にある小さなセレクト・ブックストアに行った際のこと。

 

ここは品揃えがすこぶるセンスが良く、以前から気になってた本も多数並べてあるので、行く度にワクワクする場所。ですが懐の具合もあり、お店の方には悪いなぁ、と思いつつ立ち読みだけで終わるときもしばしば。

 

その日も暑い中の街歩きに疲れて、涼みがてら立ち寄ったのです。写真集が飾られた棚に、こんな本がありました。

 

張り込み日記

張り込み日記

 

 

昭和三十三年一月 十三日。

茨城県水戸市、千波湖のほとりで、切り取られた親指と鼻と陰茎が見つかった。

翌日、湖の反対側で他の部分も発見される。死因は紋殺。遺体は酸で焼かれていた。

遺体とともに回収された遺留品に手拭いの切れ端があり、矢羽根の模様から、東京下町の旅館で使用されていたものだと判明する。事件の舞台は東京へと移った。

 

東京の警視庁捜査一課と、茨城県警との間で、合同捜査本部が設けられた。数名の刑事が茨城県警から派遣されるも、彼らは東京の地理に不慣れである。派遣組と警視庁捜査一課、それぞれの刑事が二人一組で捜査する体制がとられた。

 

向田刑事は警視庁捜査一課のベテランである。派遣組の緑川は、当時、二十五歳の若い刑事だった。

 

 

実はこの写真集のことは、去年くらいにネットであれこれ物色してたときにたまたま見つけていて、それ以来ずっと気になってたものでした。

 

正確にいうと、一番最初に紹介した”張り込み日記”の前にroshin Booksという出版社から同じタイトルの写真集が発売されているんですね。私が見つけたのはこのヴァージョンだったのです(↓それがこれ)。

渡部雄吉写真集 「張り込み日記」 Stakeout Diary

渡部雄吉写真集 「張り込み日記」 Stakeout Diary

 

 

で、さらにこれ以前、2011年にフランスの出版社で実は発表されているのです。つまり同じ写真集が3ヴァージョン存在する、というわけ。少しややこしいですね。

 

Watabe Yukichi: A Criminal Investigation

Watabe Yukichi: A Criminal Investigation

 

 

1993年にお亡くなりになった写真家・渡部雄吉氏が殺人事件を捜査する実際の刑事たちを追った写真を雑誌”日本”に掲載したのが1958年。その後、その写真の存在は長らく忘れ去られていたのですが、神保町でイギリスの古書店バイヤーにオリジナルプリントが発見されたことで運命が大きく変わったのです。

 

その後は件のフランスでの出版で話題を集め、日本でも保管されていたオリジナルネガフィルムからプリントしたものを再構成した形で発表、そして私が手に取った3度目の写真集は写真の構成やテキストを小説家・乙一氏が監修し、事件の一連の流れをより分かり易くし、なおかつ2700円(税抜)という割とお手軽な値段で発売された、というわけなのです。

 

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

 

 

そうした多くの人びとに関心を持たれるのが至極納得できる不思議な魅力がこの写真群にはあります。まずなんといってもベテラン・向田刑事と新米・緑川刑事のコントラストが、そうだな例えて言うなら、まるで黒澤明の”野良犬”のように映画的でフォトジェニック。お世辞にもイケメンとはいえないお二方なのですが(ごめんね)、これがいちいち”コクがあるいい顔してる”というか…仕事に生きる昭和の日本の男たちの姿が、まぁとにかくカッコいい!

 

野良犬[東宝DVD名作セレクション]

野良犬[東宝DVD名作セレクション]

 

 

 

また、まだまだ終戦の色濃い当時の日本の風景の中で起こった陰惨な猟奇的事件を巡る”目で読むミステリー”としても楽しめる作品なのです。(だから一応写真集だけど今回のお題である”読書の夏”にピッタリだと思います)

 

ちなみにこの写真を撮るために取材したのは20日ほどだったのですが、実際事件が解決するまでは半年以上費やしてる、とのこと。だもんで事件現場の生々しい場面とか犯人逮捕の瞬間などのスキャンダラスなシーンはないのですが、この写真集では発生から解決までを疑似体験できるような自然な並びになってて違和感は全くありませんでした。

 

…といったわけで、ここ最近終戦後の日本に若干興味が募っていた私にはピッタリの本でした。皆様にも是非お勧めしたい一冊ですね!

 

(↓この写真集にデザイナー、ポール・スミスがインスパイアされて、コレクションを製作しているそうな)

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