10年イシウエのブログ~とりあえず今日を生き抜きたいからっ!~

”凡人”10年イシウエがそれでも生き抜くために日々摂取している『心の栄養素』あれこれを書き綴っていきます。

格差社会を生きる人たちを見つめる映画 11選 (随時更新予定)

 アベノミクスによる戦後3位の好景気、といわれても庶民の我々には一切実感を感じない今日この頃いかがお過ごしでしょうか?(…と、きっこさんみたいな入りですが笑)。

 

www.nikkei.com

 

 なんでも企業の内部留保は400兆円超えてるそうで。そりゃそんなにため込んで働く人への賃金に回ってないのなら、景気回復なんて実感できるわけないわな…とため息吐息、なのです。

 

www.jiji.com

 

 そんな現代日本の現状にリンクするような映画、つうのを探してみるといろいろありまして。映画を観ること自体にはなんの効能もないのですが、厳しさを増す格差社会に生きる心構えを映画から感じる、というのも楽しみ方の一つではないか、などと思いまとめてみました。

 

 

〇どですかでん

 

どですかでん[東宝DVD名作セレクション]

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 宮藤官九郎がこの映画が大好きで、自身が監督する際は必ず観直してる、ということをインタビューで話しているのを知り、興味が出てつい最近観てみました。

 

 パワー漲る大作・傑作揃いの黒澤明映画の中では、目立たない位置にいる小品だな、と常々思ってたんですが、いやいや不思議な余韻に浸れる素晴らしい作品でしたね。

 

 終戦直後のバラック小屋が立ち並ぶとある街に住むいろんな住民の生き様をスケッチ風に切り取っている。一種の群像劇だもんでこの人が主役だ、的な人物がいないし、ストーリー的にもメリハリのある起承転結がない点が評価が分かれている由縁かも。

 

 伴淳三郎、田中邦衛、井川比佐志、松村達雄、三波伸介…昭和を代表する名優たちがわんさか登場するだけでも見応えがあるんだけど、どこか絵画的・非現実的なセットの中で、底辺で生きる人々の悲哀と可笑しみ、そしてときに卑小で自分本位な内実をリアリズムとファンタジーの狭間で描いてる独特なタッチが面白く、またそれを見つめる黒澤監督の視線には優しみとヒューマニティーを感じました。

 

武満徹:どですかでん

武満徹:どですかでん

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武満徹作曲のアコースティックギターで奏でられるテーマ曲も素晴らしかった。

 

 

〇わたしは、ダニエル・ブレイク

 

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

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 こういった題材の映画をピックアップするなら間違いなく外すことはできないイギリスの映画監督といえばケン・ローチでしょう。1967年の監督デビュー以来、一貫してイギリスの労働者階級の人々を主役に据えた映画を撮り続けている人の最新作で、もしかしたらこれが劇場映画の引退作になるかもしれないのがこの作品。

 

 質実剛健に生きてきた初老の大工・ダニエルは、求職するため職業安定所にいくが、パソコンが全く不得手にも関わらずオンラインでの登録を強要される。そのとき同じく安定所員から理不尽な対応を強いられているシングルマザーのケイティーと知り合い、交流を深めていく…

 

 監督自らが現代イギリスの格差社会の実情を調査した中で知り得た実話を元に作っているのでショッキングなシーンも多い。しかしそれでも思わず笑ってしまうユーモアがそこここに散りばめられていて、未だ強固な階級社会に生きるイギリス人の逞しさとしたたかさも思わず感じてしまうのです。

 

 

〇未来を花束にして

 

未来を花束にして [DVD]

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収入格差、もですが男女間の格差も一昔前は存在してた訳で。

(※いやいや今この瞬間だって男女間の歴然とした格差が存在してる国もいくらでもあるんですよね)

 

1910年代のイギリスで女性参政権を手にするために行われた社会運動”サフラジェット”を題材にした映画。平和的に話し合いで改善しようと試みるも無残に無視されてきた当時の女性たち。自分たちの存在と主張を世間に知らしめるために、半ば追いつめられるように過激な行動に身を挺するキャリー・マリガン演ずる主人公自体は創作なんだけど、こうした境遇に置かれた女性たちが文字通り命を懸けて闘ったことで現在のような男女平等な社会が築かれたのですよね。観てて背筋が自然に正したくなるような厳しくも美しい映画。

 

 

サフラジェット : 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト

サフラジェット : 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト

 

 

 

〇恋人たち

 

恋人たち [DVD]

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 リリーフランキー主演、 2008年公開された”ぐるりのこと”から(本人曰く)悪いことが重なり、一時は映画監督辞めよう、とまで追い詰めた橋口亮輔が7年越しに放った起死回生の一作。

 

  妻を通り魔事件で亡くし、自暴自棄から抜け出せない男…皇室の雅子様マニアの郊外に住む孤独な主婦が、ある日訳ありな男と出会い…パートナーと上手くいってないゲイのエリート弁護士…最後まで交わることのないこの3人が主軸となりストーリーが展開します。

 

  監督自身が味わった、つまづいた者及びマイノリティに冷淡な社会の様相がモザイクのように散りばめられていて、観てて決して心地よくはありません。しかしこの現代を多層的に丸ごと切り取ってやろうとする野心的な試みは、漫画やヒット小説原作の映画化ばかりが跋扈する、ここ日本映画界では実に貴重だと思うのです。

 

 

〇真夜中のカーボーイ

 

真夜中のカーボーイ (2枚組特別編) [DVD]

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 アメリカン・ニュー・シネマの不朽の名作。そして”持たざる者たち”が都会で必死にのし上がろうとする…そして(得てして)敗北する物語、でもありました。

 

 ジョーを演じた、ジョン・ボイド(アンジェリーナ・ジョリーのお父さん)ももちろんよかったんですが、なんといってもホームレス役を演じたダスティン・ホフマンの画面から臭い立ってきそうな堂に入った汚れっぷりが強烈な印象として残ってますね。

 

 ※爆笑問題のラジオ”爆笑問題カーボーイ”はこの映画からとられたそうな。

 

 

〇幸せのちから

 

幸せのちから コレクターズ・エディション [DVD]

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  観るまでは、ホームレスから株売買の世界で億万長者になった男の実話をアメリカで最も成功した黒人俳優の一人、ウィル・スミスが演じると聞いて正直あまりピンときてなかったんですが、どうして実の息子との共演も相まって真に迫る熱演に感動してしまいましたね。

 

  80年代レーガン政権下の不況に喘ぐアメリカで、主人公は妻に逃げられ、再三ツキにも見放され惨めな撤退戦を強いられ、観ている方は「彼はいつ逆転するんだろう?」って映画終盤までヤキモキ。エンディングでさらっと貧困生活から脱出する足がかりとなる、証券会社に入社が決まったことが観客に告げられます。

 

  アマゾンのレビューに「人の迷惑顧みない主人公が不快」みたいなこと書いてる人もいたけど、それが自己責任であろうが、どん底の貧困状態に陥ったらそりゃ自分のことしか考えられなくなりますって。だから社会全体でケアしていかなければならないのですよ。最低限の人間性を失わせないために。

 

 

〇ひとりぼっちの青春

 

ひとりぼっちの青春 [DVD]

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  20年近く前に観たこの映画、『大恐慌時代のアメリカで行われていた"ダンス・マラソン”に出場する、見ず知らずの男女の物語』というあらすじ以外はほとんど覚えてないにもかかわらず、未だに見終った後のどうしようもないやるせなさが心に残っているのです。

 

 とにかく最後まで踊り続けていたカップルが優勝、という至極単純なルールであるダンスマラソンに失業中の二人はヘロヘロになりながらも必死な思いで食らいつきます。その姿は当時ベトナム戦争へと突き進むアメリカの暗い世相を反映したかの如く、悲壮感あふれる殺気迫るものでした。監督はシドニー・ポラック、そして主演女優は後に急進的な反戦運動に身を投じた、ジェーン・フォンダ

 

 

〇サタデー・ナイト・フィーバー

 

サタデー・ナイト・フィーバー 製作30周年記念 デジタル・リマスター版 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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 ”格差社会”をテーマにした映画って他になんかあったかなぁ…とネットで探してみたら、この不朽の名作が紹介されていました。そういや主役であるジョン・トラボルタで有名なあのディスコでのダンスシーンは観たことない人にも強烈に印象づけられているけど…そもそも一体どんな映画だっけ?って人、結構多いんじゃないでしょうか。

 

 上流階級の人々が暮らすマンハッタンと所謂下町であるブルックリン、といった感じで完全に住み分けがなされていた、70年代ニューヨーク。ペンキ屋でバイトする、人はいいがうだつの上がらない青年・トニーは、週末のディスコではスター的存在。

 

 そんなトニーが一目惚れするステファニーは、ブルックリン育ちながらマンハッタンで仕事をするキャリア・ウーマン。彼女をデートに誘うが、「あなたと私は住んでる世界が違うのよ」と散々な言われよう。ここで並の男ならさっさと引き下がるもんでしょうが、お馬鹿と純粋さを併せ持つトニーは、賞金付きダンスコンテストのパートナーに(半ば無理矢理)ステファニーを担ぎ出す。

 

 なんといっても野性味と人の良さを体現するジョン・トラボルタの存在感とカリスマ性に惚れ惚れしてしまうのですが、地元のダチと何の疑問も持たず、明日の見えない底辺の生活を謳歌していた青年が少しずつ目覚めていく成長物語としても実に見応えがありましたね。

 

 

〇不安は魂を食いつくす

 

不安は魂を食いつくす [DVD]

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 70年代の西ドイツ、掃除夫として働く独り暮らしの老婆とモロッコから出稼ぎに来た若い黒人男性のメロドラマ。監督は、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

 

 中盤までは周囲の差別的で好奇な目にさらされながらも愛を育む、底辺で生きる二人…といった感じで物語が進むのですが、周りの人々の態度が軟化し始めるにつれ今度は肝心な二人の関係に陰が差してくる、という皮肉な展開となります。

 

 社会から疎外された人たちの寒々しい光景が画面越しに立ち上ってくるような映画でしたね。

 

〇息もできない

 

息もできない [DVD]

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 そもそも傑作揃いの韓国映画の中でも超弩級の傑作、そして観た後に感じる”やるせない”という言葉がこれほどあてはまる映画もないのではなかろうか?

 

 主役である粗野なチンピラ・サンフンと女子高生・ヨニ。ひょんなことから出会った二人が少しずつ心を通わせていく。貧困家庭に育った二人が徘徊する韓国の下町の風景、家の雰囲気の隅々に殺伐とした物悲しさが満ちている。

 

  『あっ、そうだったのか!』と意外な展開が待っているストーリー運びを含め、所謂自主製作ものにありがちな勢いまかせじゃない緻密さもある。サンフンを演じ、製作・脚本・監督までも務めたヤン・イクチュンの暗く激しい情念がこの映画には文字通り息もできないほど詰まっているのです。

 

 


菅田将暉がボクサー役に挑む!『あゝ、荒野』特報

 

↑近日公開、ヤン・イクチュン出演の日本映画。楽しみ。

 

〇スノーピアサー

 

スノーピアサー(字幕版)

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  現在は有料ネット配信サービスであるNetflixのみでの公開となっている新作”オクジャ”が話題になっている韓国の新鋭、ポン・ジュノ監督の初ハリウッド進出作品。

 

 氷と雪に覆われた近未来の地球。わずかに残った人類は永久機関で動く列車の中で暮らしていて、前方車両に富裕層が、そして後方には奴隷階級である貧困層がひしめき合うように生活している。貧困階級であるカーティスとその仲間は、自由を求めて先頭車両まで決死の突破作戦を決行するが、待っていたのは意外な結末だった…

 

 まさにグローバル社会の縮図、上VS下、政治的メタファーありまくりなストーリー、のようですが、いい意味で大味というか漫画チックというか、まぁ突っ込みどころも満載で、あんまり眉間にしわ寄せて真剣に観る類いの作品ではないのでご安心を(笑)。

 

 

 

 

99%対1% アメリカ格差ウォーズ (講談社文庫)

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